宇奈根排水樋管周辺の浸水の検証と短期対策の説明会
7月中旬から川崎市下水道局が順次開催してきた台風19号の被害の検証と短期対策についての住民説明会が7月30日、宇奈根排水樋管周辺の住民対象に行われました。すでに市は検証委員会による検証結果を4月に市議会に報告し、すぐに実施する対策については予算をつけて実施しています。住民への説明会は新型コロナ感染によって遅れて開始されました。
今回のゲートの操作判断は、いずれも「操作手順どおりに行われていた」とし、「降雨があったことにより、操作の判断としては操作手順どおりではあるが、河川水に含まれる土砂の堆積による被害防止の観点からも逆流への対応は必要と言える」と、操作手順通りに行ったことを繰り返し強調した上で、逆流への対応は必要だったとしました。あくまでも間違いではなかったと言っていますが、私は二つの問題があると思っています。
この検証には、二つの矛盾=瑕疵があると思っています。
① 「操作要領」は、樋管の目的は逆流を防止するためと定めている
今回、市は「操作手順」の中の「降雨のある場合、大雨警報の発令で大雨が予想される場合は全開を維持する」と書かれていることを全開の根拠にしていますが、「操作手順」の上位規定である「操作要領」では(目的)第2条は、多摩川の洪水などによる逆流を防止し流域住民の生命や財産を災害から防御することを操作の目的とし、第3条で、樋管から逆流が予想される時、ゲートを閉にできるものとすると定めています。まさに樋管の設置目的は逆流を防止するためなのです。なぜ、目的に相反する手順を定めたのか今だに納得がいきません。
全開は内水氾濫を防ぐためって言いますが・・・
市は操作手順の「大雨のある場合、大雨警報の発令で大雨が予想される場合は全開を維持する」その理由について、「内水氾濫を防ぐため」と言ってきました。ゲートを全開にすれば、内水氾濫を防げるのですか?と言いたいと思います。
大雨警報は出されていて、当然、多摩川の上流にも大雨はふりしきり、小河内ダムの放流が行われました。当然多摩川の水位は上がり樋門からの逆流が起きることは専門家なら予測できる筈です。手順通りに行ったと言いますが総合的に判断したのか、硬直化していたのではないかと思わざるを得ません。
② 「内水氾濫を防ぐため」というのならポンプ車を配備すべき
内水氾濫を心配するのであれば、なぜその操作手順を定めると同時にポンプ車を配備しなかったのかと言いたいと思います。
12日の活動記録を見ると、ポンプが運転されたのは5つの排水樋管のうち、14時に溢水を確認した諏訪排水樋管だけで、14時10分に移動式ポンプの運転開始の記録でした。そして16時10分には移動式ポンプ積載車水没のため、移動後安全な場所で待機したと書かれています。他の樋管には溢水を確認してもポンプの運転記録はありません。配備されていなかったのです。
大きな被害のあと、やっと
「逆流時は閉鎖する」と操作手順を改め、ポンプ車4台購入することに。
短期対策として、各樋管に水位計、流向計、監視カメラを設置し、逆流を感知したらゲートを閉める。水位計のデータは中部下水事務所などで見られるようにする。ゲートの開閉を電動化し、停電時のため移動式発電機を配置するとのことです。各樋管ごとに全閉にする河川水位を定めています。
排水ポンプ車は各排水樋管に1台ずつ配置することを基本とする。4台購入し、1台は持っているので計5台に。しかし、諏訪排水樋管は2台必要なので、国交省から大型のポンプ車を1台借りることになっているとのことです。でも緊急時に間に合うか心配です。
長期対策を前倒しして実施を
今回の説明は短期対策だけでした。市は中長期対策としてポンプ場の新設を言っていますが、まとまった用地と長期にわたる工事が課題としていますが、短期対策だけでは激甚化する最近の豪雨被害から安全を確保することは困難です。
中長期対策を前倒しして実施することや雨水貯留管施設や遊水地などの対策をしっかり取り組むよう求めていきます。
災害に「想定外」はもはやない
市は「検証報告書」の中で、「多摩川の流域雨量の予測が困難だった」「想定以上の水位となった」としていますが、かつても小河内ダムの放流や多摩川上流の豪雨の後に水害が発生しているのですから、そのデータを分析していれば、想定以上の水位というのは出てこないのではないかと思います。
気候変動による水害は河川の氾濫や土砂崩れなど命を脅かす大災害となっています。「50年に一度の災害」が毎年のように起きています。災害対策は急務です。