「いま、地球規模、国規模、そして川崎市でやるべきこと、できること」の学習会
11月3日、共産党川崎市議団主催の環境問題の学習会がありました。市議団が、北海道で環境問題のコンサルティングをされている(株)NERC(自然エネルギー研究センター)のセンター長の大友氏に研究委託した上記の表題の報告書が完成したことからその報告会として開催されました。
新型コロナウイルスのパンデミックの影響は、当初の予想をはるかに超える事態を引き起こし、今なお収束の目処が見えない状態です。また、今後も同様な事態が発生することが危惧され、これまでの社会・経済のあり方が根本的に問われ、「ポストコロナ社会」について、さまざまな議論が起こっています。
一方、2015年9月の国連サミットにおいて、全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会などの諸課題を達成するための国際連合が主導する活動が取り組まれています。
大友先生はこの研究をどういうスタンスで行なったのかという質問に対し、このように答えました。川崎市に対して、どういう将来を実証的に示せるか。30年後を見通すのは難しいが方向性は示せるだろうと。今の社会のあり方がいいとは誰も思っていない。じゃ、どういうのがいいのか?川崎をどうやって変えたらいいのか。どこに向かう必要があるのか。今のまま進むのではなく、過去に戻る話でもない。誰が担い手か。気付いた人たちがそこに向かって努力を始めることが大切と言われました。
このままで持続可能な社会が存続しうるのか。今、このままで放置すると地球は持続できない惑星になってしまうのではないかという警鐘を鳴らす大友先生に私も同感です。
私たちがすむ大工業都市川崎のあるべき方向性を考えて、大友先生は「緑化と都市農業」「再生エネルギー」「水素」「交通」そして「廃プラ」の5つの分野に焦点を絞り、「持続性を確保するには何を考え、どう進むべきかについて現状と課題を再整理し、問題提起されました。2050年の到達点を目標として、今後の30年間を、10年毎の3期間にわけ、それぞれ目指す目標を「実施内容と取り組みスケジュール」として示し、それらの目標の実現可能性についても根拠づけて論説しています。目からうろこの内容です。
提言の内容は
提言1 緑化と都市農業、エネルギーと食料の自活を目指す川崎市の緑化と都市農園化を提案 とりわけ、臨海部の緑化については、“森の中の工場群”を目標に、食料生産の場にも活用する“都市農業”の先進モデル地域とすべき。
SDGsの最も重要な課題は、持続可能な社会をどう作りあげることにある。このためには食料とエネルギーの持続的、安定的確保が大前提になる。こうした観点からエネルギーについては再生可能(自然)エネルギーの利活用、食料については有機栽培を目指す取り組みを、臨海部の莫大な廃熱利用を開始すべき。電気は、あらゆる人工構造物上に設置された太陽光発電によって確保します。将来は市域全体の“緑化”と資源・エネルギーの自律を目指す新しい“都市農業”のモデル地域とすべきです。
提言2 再生可能エネルギー=臨海部の化石燃料を使った集中型巨大発電所は、再生可能エネルギー資源を使った分散型発電所に移行。公共施設の省エネルギー化および再生可能エネルギーへの転換を積極的に推進する
提言3 水素=CO2の発生を伴わない究極のクリーンエネルギー資源としての水素の実用化について
提言4 交通=川崎市の未来の「都市交通」のあり方は、都市構造の改変を伴う大きな課題であることを認識し、“100年に一度“の大変革期”、”モビリティ革命“に臨む必要がある。大都市の交通問題は、「過密による渋滞」「排ガス、騒音の自動車公害」「高齢化社会」に集約される。「拠点」をどう見るか。という点についても大都市の最大の問題である”過密“をどう解決するかという視点からの検討が必要。
・高齢者・障がい者(車いす移動)への配慮は、歩行者空間の充実に尽きる。
・歩行者・自転車利用の位置付けは、歩行者空間の充実と自転車の通行環境の整備
・巨大災害時では、深刻な道路交通麻痺、膨大な数の避難者、帰宅困難者の発生など、今から対策が必要
提言5 廃プラ=廃プラは焼却処分による石油由来のCO2を排出するため、焼却処分でなく、資源化に切り替える。廃プラの元は、石油であり、この焼却処分がCO2をはじめとする環境汚染物質を大量に排出すうることになるため、「パリ協定」および「SDGs」の流れの中、国際的に避ける方向に向かっている。
世界的には新しい技術、考え方が広がっていること。英国・オランダなどなどの企業が、焼却ではなく、廃プラを道路の舗装材に使うという技術に活用しているといいます。5ミリくらいに粉砕して混ぜて舗装道路に活用するとのこと。プラスティック混合アスファルトは従来よりも持久力で6倍、耐久力3倍の道路になった。インドは国内企業が独自に技術開発し、既に10万キロを超えているといいます。これも驚きでした。
大友先生は脱炭素社会の具体的なイメージは「みどりのまち」。川崎の一番の課題は臨海部の将来のあり方。京浜工業地帯を形成する臨海部の工場群、ここを緑で覆い尽くす。大工業都市における再生可能エネルギーと食料の生産地かの先進モデル地域とする。「森の中の工場群」のイメージも示され、10年ごとの計画も示されていますが、1時間半の講演があっという間でしたが、まずは冊子を読むことから始めようと思いました。