保健所の疫学調査絞り込みで感染者を抑えられるか?自宅療養患者自らが24時間健康観察を行うことで命を守れるのか?
1月19日、年明け始めの厚生常任委員会がひらかれ、午前中は⑴新型コロナウイルス感染症についてとして、新型コロナウイルス感染症の発生状況、医療提供体制、検査体制、保健所の積極的疫学調査の見直し、感染者の爆発的増加に伴う自宅療養サポートの見直しなどについて ⑵県の宿泊療養施設における入所者の死亡などについての報告がありました。冒頭の報告は行政の具体的な業務の変更で、重要なものばかりですが、行政の口頭説明が概略だけであとは参照してくださいというのは報告の仕方としていささか不満です。なぜ見直しかという理由は、感染者が急増しているという理由ですが、もっと丁寧な説明をしてほしいと思います。
保健所の積極的疫学調査の見直しについて
1月8日、県は新規感染者の急増とともに感染経路不明者も増加しており、積極的疫学調査の意味がなくなっているとして、また保健所業務の増大が著しく、新規感染者への適切な対応が難しくなっていることから、県内全保健所において積極的疫学調査の対象を絞り重点化するとしました。
保健所体制の強化を
保険所の業務は、これだけ感染者が急増すれば、現状の体制では担いきれない、応援の職員を配置してももうパンク寸前というのはわかります。だとするなら、保健所職員を増員すべきですがそのことについては触れられていません。私たちは保健所の感染追跡を専門的に行うトレーサーの配置を始め、保健所体制を抜本的に強化することを、先日の緊急事態宣言を受けての申し入れで求めましたが、これからも求めていきます。
積極的疫学調査を縮小するならば、なおさら検査を拡充すべき
希望する人への行政検査の実施をーこれまで保健所は陽性者の行動を調査して濃厚接触者に連絡して行政検査をしてきたがそれをしないとなれば、さらに感染者が増えてしまうのではないか。感染経路不明が今は60%前後になり市中感染が広がっている。無症状者の感染を把握するために希望する人への行政検査を行うことを求めました。
医療機関、高齢福祉施設の集中検査の徹底と社会的検査に踏み出すべき
医療機関や高齢者施設でクラスターが多く発生しています。1月16日現在、クラスターが発生している医療機関は20ヶ所、522人。高齢福祉施設は43施設、719人です。全体のクラスターのカ所数の64%。人数では71、9%を占めます。医療機関と高齢福祉施設のクラスターを防止する検査は重症者を減らし、医療への負担を減らす上で決定的に重要です。県は今後、集中検査を今以上に迅速に行っていくと答弁しました。最近では広島市に続いて埼玉県が県内の高齢者施設でのクラスターを防ぐために感染者が出なくても社会的検査をすることとしたことを紹介し、これまで集中検査を実施してきた県としてさらに一歩前に進めて社会的検査の実施を強く求めました。1日の検査能力は19000件あるのだから是非実施を求めました。
「プール方式」のPCR検査導入を
厚労省は15日、PCR検査で一度に複数の検体を分析する「プール方式」を行政検査の対象にする方針を明らかにしました。これは世田谷区が1月から実施している方式ですが、医療、介護施設の一斉検査、社会的検査への活用が期待され、近く自治体に実施指針を示すとの報道があったことを紹介し、県の対応を求めました。そのような通知があれば検討すると答弁しました。
大丈夫か!急増する自宅療養者の健康観察は基本自分でというが。
県は、このまま感染状況が続くならば、1月27日に感染者が病床数を上回るとしています。陽性者で入院を必要とする人がベッドの受け入れを待っている人が自宅待機しています。1月16日には95人の方が入院ベッドを待っています。全国でもこの状況が広がっていますが、待機している間に容体が急変し亡くなられる人が今続出しています。県でも1月6日、そして16日にはもうお一人の亡くなった報道がありました。
軽症.無症状者の方の自宅療養は急増しています。県でも1月10日が3863人から1月16日は5088人へと1週間で1000人以上増えています。県は18日、自宅療養の方の健康観察を職員らが行なっていたのを患者自身で行うことを基本とする体制に変更すると決定したと、19日に知った時は驚きました。
県は血液中の酸素量を計測する「パルスオキシメーター」を、40台以上などの重症化の懸念がある患者に重点的に配布。数値の変化を患者が自ら常に確認し、ラインまたはAiコールによる健康観察を行う。酸素飽和度が93%以下の場合は職員が電話しハイリスク者としてフォローするとともに、ラインなどの回答が得られない場合は保健所職員が訪問するとしています。すぐに入院できない場合に備え、一時的に酸素吸入を行う拠点を設置するなど、災害時の「救護所」のような体制の構築を検討するということです。
ライン、またはAIのコールによる健康観察で適切に判断できるか非常に危惧します。また、情報共有がどこかで落ちる心配もあります。これまでの死亡の事案の検証がとても生かされているとは思えません。
保健所の疫学調査の見直しも自宅療養者の健康観察の見直しも12月の委員会の時と比べ、感染が急拡大はしていますが、内容が後退していると言わざるを得ません。この日の質疑は概ね10分で、保健所体制の強化と自宅療養者の健康観察の見直しまで質疑ができませんでした。
午後は病院協会の副会長さんはじめ4人の方の参考人招致を行いました。報告はまた改めてしたいと思います。