ナラ枯れ被害対策について【環境農政委員会における質疑】
大変遅くなりました。7月1日にさかのぼりますが、6月議会中の環境農政委員会で質問した「ナラ枯れ対策について」の報告をします。
森林は神奈川の原風景ともいうべき貴重な自然環境です。森林は雨水を蓄え綺麗にしながら少しずつ時間をかけて流すので、洪水を防ぎ、川は渇水しにくくなります。森林にふった雨の50%は地中に染み込み、地下水となってゆっくりと川や海に出たり、木の根に吸い上げられて木の葉から蒸散します。森林は二酸化炭素を吸収し、酸素を吐き出して空気をきれいにします。神奈川県の森林面積は県土の39%、94,701ヘクタールで、全国の都道府県の森林面積では第44位とのことです。私は静岡県の山深い寒村で山の恵みに囲まれて育ちましたので山にはとても愛着があります。
川崎でも麻生区でナラ枯れ被害があって、共産党の勝又光恵川崎市議が時々質問しています。初めはナラ枯れって何?という状況でした。県内では2017年頃から被害発生が確認され、その後、広い範囲に広がっていったとのこと。この問題初めて取り上げました。以下は要旨です。
(石田)本県におけるナラ枯れ被害の状況や推移について伺いたい。
【水源環境保全課長答弁】
本県では、ナラ枯れは平成29年度に初めて確認され、令和2年度には寒川町と開成町を除く31市町村で被害が発生している。被害市町村数の推移をみると平成29年度は5市町、平成30年度が18市町、令和元年度が21市町、令和2年度が31市町村に拡大している状況。 また、被害の広さは平成29年度が239立法メートル、平成30年度が977立法メートル、令和元年度が1195立法メートル、令和2年度は令和元年度と比較して約10倍の約1万1700立方メートルと拡大している。
(石田) 全国的な被害はどのようになっているのか伺いたい。
【同課長答弁】
林野庁の集計によると、全国の被害量は、平成22年度の32,5万立法メートルをピークに、令和元年度はその2割程度まで減少している。しかし令和2年度はまた再び被害が増加して、18,6万立法メートルと再拡大している。令和2年度は関東地方の被害量が増加しており、東北地方や北陸・甲信越地方、中国地方でも増加している
(石田)被害対策について、これまでどのように取り組んできたのか。また課題は何か。
【同課長答弁】
県が管理する県民の森などでは、被害木の伐採ですとか薬剤注入などの防除対策を進めている。国庫補助事業を活用して、森林所有者などが行う防除対策を支援するとともに、市町村職員や市民団体に対しては防除技術を習得したいとの要望に応えて県が被害対策の技術研修会などを実施している。
しかしながら、昨年度のように被害が広範囲にわたると、全体像の把握とか全ての被害に対処することが困難な状況になってきている、そうしたことが課題と捉えている。
(石田)こうした課題に対して、令和3年度はどのように取り組むのか。予算措置の内容も含めて伺いたい。
【同課長答弁】
先ほど申し上げた課題である被害状況の把握方法については、森林環境譲与税を活用し、衛生デジタル画像による県のナラ枯れ調査を実施する予定で準備を進めており、令和3年度は3696万円を計上している。
ナラ枯れ被害のガイドラインをこの5月に策定しこれを基に市町村と連携して被害状況に応じた対策を行ってまいる。被害対策にかかる令和3年度の予算として、国庫補助と県の補助を合わせて市町村に補助しているが、この予算が約1千600万円。そうした予算を活用して市町村が行う防除対策に補助することとしている。
補助金の負担割合は、国庫は2分の1、県が4分の1、市町村などは4分の1となっている。林野庁等が計上している予算は全国でトータル5億円程度、本県の要望に対し実際の配分額が下回っていることから、国に対して予算の充実について要望している。
(石田)非常に予算が厳しいということで、国に要望していくとのことだが、国庫補助金が1600万円、国と県と合わせてということなので、蔓延するナラ枯れ対策費用としては予算がとても少ないと言わざるを得ない。是非、しっかりと国に要望していくとともに県の方でも支援する予算を組んでいただきたい。
県が策定したガイドラインでは、被害が発生した箇所における対応として、優先的な対応の考え方を示したとのことだが、その考え方について伺いたい。
【同課長答弁」
大きく2点の視点から考え方を整理している。一つ目が、本県のナラ枯れ被害の特筆すべき点として、山間部だけではなく、暮らしに密接した地域にいてもこのナラ枯れ被害が多く発生していることから、人的・社会的影響を考慮している。対策に当たっては、安全面の確保、これを最優先としつつ景観面の保全ですとか、歴史的・文化的価値の保全を優先として被害対策を実施することとしている。
もう一つは被害状況に応じた対策の考え方を示している。被害を根絶すること
は莫大な費用と労力を費やしたとしてもなかなか極めて困難と考えているので、被害対策は、森林や周辺の被害状況に応じて手法を変える必要があると考えていて、まず、被害が発生していない地域では被害の監視を行い、発生の初期段階では徹底した防除対策を行う。また、ある程度被害が発生しているところやかなり被害が激しいところでは、被害木の全量駆除が困難なので、発生した枯死木、いわゆる枯れた木を適切に処理しながら、可能な範囲で防除対策を実施することや、同時に植生回復を目的とした森林整備を中心に取り組む。こういった対策の考え方を示している。こうしたガイドラインを参考に市町村の実情に応じて取り組んでいただければと考えている。
(石田)ガイドラインでは、具体的な予防の手法について、駆除の手法について、
そのほか、枯死木による人身被害や生活被害を防止することや景観面に配慮す
るために枯死木を伐採する手法について、または予防伐採などが示されていま
す。民有林の所有者に専門家の助言、指導が必要と思うがどのような取り組みを
しているのか伺う。
【同課長答弁】
県の役割としては、対策のガイドラインを示して、その対策方法を普及していくこととしているので、これまでも各地域において対策に必要な研修会の実施や個別の相談にも対応してきた。ガイドラインに示した予防や防除の作業内容には、粘着シートを巻くなどの比較的簡素な作業から、被害木の伐採など専門的な技能が必要で危険を伴う作業もございますので、土地所有者自ら行うことは難しい作業である。県では、今後も研修会を開催してガイドライン考え方や被害状況に応じた防除方法を説明するとともに、自ら対策を行う市民団体や防除対策を行うことが困難な個人の所有者に対しまして、それぞれの状況に応じた助言を行って参りたいと考えている。
(石田)要望
森は、水源を豊かにし、土砂災害を抑え、人の心を癒してくれるなど、人が生きる環境を守るために様々な役割を果たしてくれている。このような森を保全することは、遺伝子や生物種、生態系など生物多様性の保全につながる。
豊かな森林の役割を考えるときに、蔓延するナラ枯れに対する予防や駆除対策を行うことはとても重要と考える。予算の増額を国に求めるとともに県においてもぜひ予算の増額を要望する。
本県のナラ枯れ被害は急激に拡大しているが、一方、すべての被害木に対策を行うことが難しいということでした。優先度を決めて対策にあたるために、ガイドラインの周知等についての研修の場を設けることや、市町村、民有地の持ち主に対してもの援を行っていただくことを要望する。
【7月8日、意見発表で発言した内容です】
(2017年の発生当初の5市町から2020年には31市町村に被害が拡大する中、県はナラ枯れ被害対策ガイドラインを策定し、森林や被害状況に応じた対策をとることとし、監視や予防、駆除対策、枯死木の伐採などを実施してきたとのこと。)
森林所有者が実施する被害対策に対して、市町村関係機関と連携しながら、ナラ枯れ被害の問題点や規模、周辺環境などに応じた適切な助言と技術支援を引き続き行うよう求めます。
また、緑地保全に関わるボランティアの方々が、高樹齢・大径木に粘着シートを巻いたり薬剤を注入するのはとても大変と伺っています。そうした活動への支援も是非お願いします。
蔓延する被害対策にかかる予算は約1600万円とのことで、少ないと言わざるを得ません。国に増額を求めるとともに、県においても増額するよう求めます。
なお、掲載の資料は、神奈川県のホームページからです