一般質問その5=危険な羽田空港新飛行ルートについて
9月17日に行った一般質問の最後は、羽田新飛行ルートの問題です。世界には離陸直後に石油コンビナート上空を低空で飛ぶような危険な飛行ルートはどこにもありません。ひとたび石油コンビナートで事故があれば大惨事になる羽田空港新飛行ルートの問題を取り上げ、知事の見解を質しました。
共産党川崎市議団が、実際飛んでいるのに、航空機墜落などの事故を想定したアセスメントが行われていないのは許されないと指摘し、県にアセスをやるよう要求するべきだと求めても、県はしないと言っているとの市長答弁が繰り返されています。そこで3点について質問しました。
① 「石油コンビナート等防災アセスメント調査」の実施について
② 航空機騒音に対する取り組み
③ 新飛行ルートの中止および「石油コンビナート等防災計画」の修正について
以下は音源から書き起こした原稿から要約したものですので会議録ではありません。
【質問】
羽田空港新飛行ルートについてです
① 「石油コンビナート等防災アセスメント調査」の実施について伺う
2020年3月より、南風時に羽田空港B滑走路から飛び立った航空機は、すぐに臨海部の石油コンビナート上空を低空で通過する新飛行ルートを開始、1年半経過しました。世界の中で離陸直後に石油コンビナート上空を通るような危険な飛行ルートの空港は他にはない。
コンビナート上空の飛行は長年原則禁止だった
昭和41年に東京湾などで相次いで航空機墜落事故が発生したことを踏まえた川崎市長,川崎市議会の要請に対し、国は、「羽田空港に離着陸する航空機は『コンビナート上空の原則飛行禁止』、やむを得ない場合は3千フィート=約900m以下の飛行は行わせないこと」と回答したように、これまでコンビナート上空の飛行は危険であり原則禁止だった。
墜落事故は、2019年にはロシア・モスクワで離陸直後におきている。2021年アメリカコロラド州で旅客機の破片の落下、2018年熊本県上空で金属片の落下事故が起きている。「部品欠落」は2017年以降の2年間で974件、1180個に上ると国交省は発表している。羽田空港ではバードストライク(鳥の衝突)が過去5年間で全国トップの868件発生しており、離陸直後に「生態系保持空間」の多摩川河口干潟を横切り、コンビナート上空に飛びますから非常に危険である。
このように、石油コンビナート上空の危険な飛行について、住民の不安はより高まっている。
消防庁の「石油コンビナートの防災アセスメント指針」には、「本指針で取り上げていない災害が重要と考えられる場合には、立地環境も考慮して独自に評価を行うことを推奨」している。本県の「石油コンビナート等防災アセスメント」調査は、台風などによる被害を想定したもので、航空機の災害は位置付けていないとのこと。しかし、もともとコンビナート上空は、原則禁止と言っていたのに飛ばすのですから、しかも低空飛行で飛ばすのですから!台風のような自然災害とは全く違うと考えるべきだ。
川崎市は2004年に、「航空機災害警防活動指針」を策定し、「もし、航空機がコンビナートに墜落したら」「機体が原形をとどめることなく飛散、飛行機の燃料が広範囲に飛散し同時に数カ所での火災発生が予想され、場合によっては放射熱により消防隊の接近は困難になり、、、さらにタンク内に誘爆、ファイヤーボールの発生危険を生じる」と想定した。コンビナートの従業員は約5万9千人。万が一墜落したら想像を超える大火災、大惨事となる。
【質問】→(知事答弁)
〈そこで知事に伺います〉
羽田空港新飛行ルートによる墜落、落下物などによる災害は、消防庁の「石油コンビナートの防災アセスメント指針」で言っている「重要な災害と考えられる場合」に合致すると考えますが見解を伺う。
また、県は航空機の墜落、落下物などによる災害リスクを考え「石油コンビナート等防災アセスメント調査」を実施すべきと考えるが伺う。
→(知事答弁)
まず石油コンビナート等防災アセスメント調査の実施についてです。県では消防庁が定めた防災アセスメント指針に基づき本県の石油コンビナート地域で災害が発生した場合の影響等を調査し 平成27年に石油コンビナート等防災アセスメント調査報告書を取りまとめました。この調査では地震の被害を対象とした評価に加え石油等の漏洩が広がり火災や爆発等が拡大する大規模災害を想定した評価を行っています。 この大規模災害には航空機の墜落や落下物による災害も含まれると認識していますので 県として改めて 防災アセスメント調査を実施することは考えておりません。
② 航空機騒音に対する取り組みについてです
騒音も深刻な問題です。離陸した飛行機が川崎区殿町3丁目付近に到達した時の高度約300m直下では最大91db、直下の住民は3分おきにパチンコ店内にいるような騒音のもとでの生活を余儀なくされます。近くには、AOI国際病院や殿町小学校もあります。病気の方や子ども達を「騒音性難聴」のリスクのある環境のもとに晒していいのかが問われています。私も現地に行きましたが飛来時はとなりの人と会話ができませんでした。
国土交通省は、羽田空港機能強化にかかる環境影響などに配慮した方策として「新たに騒音測定局を設置することなどにより、新飛行経路の騒音影響に関する監視及び情報提供を行う」ことを示しています。
【質問】→(環境農政局長答弁)
〈そこで環境農政局長に伺います。〉
県として、航空機騒音の環境影響について、どのような取り組みを行なっていくのか伺います。
→(鈴木環境農政局長答弁)航空機騒音に対する取り組みについてお尋ねがありました。航空機の騒音については環境基本法に基づいて環境基準が定められておりその適用地域の設定は必要性も見極めた上で都道府県知事が行います。その検討にあたっては航空機の飛行に伴う騒音の把握が必要ですが現在コロナ禍で 航空機の減便が続いているため十分な騒音測定ができておりません。県としては引き続き航空機の運航状況を注視するとともに地元の川崎市と連携してまずは測定データの集積に努めてまいります。
③ 新飛行ルートの中止及び「石油コンビナート等防災計画」の修正についてです。
昨年の2月、国会において、わが党の畑野君枝衆議院議員の質問に対し、内閣府の大臣官房審議官は、災害対策基本法に基づく国の防災基本計画にある「石油コンビナート対策等」に、「航空機の墜落などの事故を原因とするものも含みうる」と答弁している。
さらに「石油コンビナート等災害防止法」に基づき石油コンビナートを有する都道府県は、「石油コンビナート防災計画」を作成し、毎年検討を加え、必要に応じて修正しなければならない」と定めている。
当初「世界中からヒト・モノ・カネを呼び込むために国際線の増便が必要。多大な経済効果をもたらすとして羽田新飛行ルートが進められてきた。しかし、現在、コロナ禍で航空会社は減便を進め、国際線の需要はさらに厳しくコロナ前の1割程度にとどまっており、今後も増便は見込めないと考える。
【質問】→(知事答弁)
〈そこで知事に伺います〉
住民が大きな不安を持っている危険な新飛行ルートを中止し、従来の飛行ルートに戻すよう国に求めるべきと考えますが見解を伺う。
また、現にコンビナート上空を飛行しているからには、国会答弁を踏まえ航空機事故を想定した「石油コンビナート等防災計画」を修正すべきと考えるが伺う。
→(知事答弁)
最後に新飛行ルートの中止及び石油コンビナート等 防災計画の修正についてです。まず新飛行ルートの中止について、羽田空港の機能強化は県民の利便性の向上や県全域への多大な経済効果をもたらすものです。 県がこれまで要望してきた安全対策や地元住民への説明等に対し国は着実に答えており、また今後も国が責任を持って対応する旨確認していることから新飛行ルートの中止を求めることは考えていません。次に 石油コンビナート等防災計画修正についてです。この計画では従前から国が航空機事故による災害の発生を未然に防止するため予防措置を行うこととするなど国の責任で安全対策を講じることを明確にしています。そのため県としては 現時点で石油コンビナート等防災計画を修正することは考えていません。私からの答弁は以上です。
【石田意見要望】
平成27年3月にまとめた羽田空港新飛行ルートの「コンビナート等防災アセスメント調査」には、最大限の想定しうる災害、被害を想定しているので、航空機災害も含まれるとのことです。しかし、国のアセス指針の改定も県の防災アセスメントも東日本大震災を契機に行われた調査であり、当時は、原則禁止だった石油コンビナート上空を飛行することは全く考えられておらず、航空機墜落事故などを前提としていません。航空機墜落は、ジェット燃料を搭載した飛行機が石油タンクなどに突っ込んでなぎ倒すなどのことが想定されるのですから被害の規模が違うと考えます。航空機被害を想定したアセス調査と防災計画を是非検討していただきたいと思います。
台風や地震などの自然災害は防げませんが、こちらは、石油コンビナート上空を飛ばさなければ、甚大な航空機被害は防げるのです。市民やコンビナート労働者が甚大な被害から命を守るために石油コンビナート上空は原則飛行禁止にすることを国に要望することを重ねて要望いたします。