困難を抱える子ども達の権利を守る県の役割と責任について【予算委員会】
3月17日の予算委員会で、児童相談所の児童心理司、児童福祉司の増員とスキルアップ。弁護士の配置、一時保護所の学習を受ける権利の保障のためになどを質問しました。
→答弁概要ですが、メモに基づくので不確かな部分があリます
①児童相談所の夜間対応がどうなっているか伺う
先日、神戸市の児童相談所にある「こども家庭センター」において、未明に助けを求めて訪れた小学6年の女の子を、インターフォン越しの対応で追い返したという報道があった。
事件後明らかになったことですが、ここでは、休日・夜間の電話相談や来訪者の受付をNPO法人に委託しており、当直業務のマニュアルが、来所者について委託職員が入館の可否を判断できると解釈できる内容になっていたとのこと。本県の児童相談所の夜間対応についてどうなっているのか伺う。
→ 一時保護所を併設している中央、平塚、厚木児童相談所では、一時保護所の常勤職員が対応し、課長などの職員に連絡して指示を仰ぐ。一時保護所のない鎌倉三浦地区と小田原児童相談所では委託の警備員が対応するが、必ずあらかじめ決めている課長など責任のある職員に電話連絡して指示を仰ぐこととしている。
神戸市の事案を受けて子供が保護を求めてきた場合の対応について児童相談所長会議で、改めて徹底することを確認して職員や警備員に周知した。
②児童の権利擁護に精通した弁護士に常時相談できる体制の整備とは
次に、2020年度当初予算案には、児童相談所の法的対応力を高めるため、児童の権利擁護に精通した弁護士に常時相談できる体制を整備するとある。児童虐待が深刻化する中、児童相談所は子どもを保護する権限や家屋などに立ち入って調査する権限など、様々な法的権限を駆使して子どもを守っている中で、緊急に対応しなければならない法律問題に直面することもあると聞いている。また、直接会って話をする必要のある複雑な案件や、複数の関係者が集まって、一緒に、弁護士に相談した方がよい案件もあると思うが、具体的に、どのような体制を整備するのか伺う。
→[KI1] 県所管の児童相談所では、週1回勤務の非常勤の弁護士を配置している。援助方針を決める会議に出席し法律家としての意見を述べたりする。それに加えて、来年度より児童虐待や子どもの権利擁護に精通した複数名の弁護士と契約して電話やメールのほか、必要に応じて弁護士事務所を訪問するなど、いつでも相談できる体制にしたいと考える。
③一時保護所における児童の学習を受ける権利の保障について
次に私は、昨年9月の一般質問で児童相談所の一時保護所における子どもたちの学習を受ける権利を保障することを求めた。一時保護所からの通学は困難なことが多いことから、入所している子どもの学習権は保障されなければならない。2020年度当初予算案では、一時保護児童教育推進事業費として一時保護所の子どもに対する教育面でのケアを図るため、教育経験者等を配置し、学習支援を行うとあるが、本県の一時保護所における通学していない子どもの平日1日あたりの平均学習時間と、一時保護所内の学習室の構造について、一つの部屋でみんなで学習する形が多いと聞いていますが、本県はどのような状況か、また、1箇所あたり何名の学習指導員を配置するのか伺います。
→ それぞれの一時保護所で1日の日課が決まっている。午前中に1時間半から2時間程度。午後も1時間半程度の学習時間を設けている。学習室は教室のような形態で中央児童相談所は2室、平塚児童相談所は1室。指導員は各所2名ずつ配置している。
④丁寧に指導するには各所2名では少ないと思うが見解を伺う。
一人ひとりの子どものおかれていた家庭環境、あるいは生育歴の中で、学習に向かう
姿勢や学力がそれぞれ違い、学習に向かう以前の問題もあろうかと思う。学齢期の子どもは小学校低学年から高校生までの児童生徒がおり、受験するおこさんもいると思う。昨年9月にも求めたが、学年や学力の違いがある子どもに対し、丁寧な学習指導を行うには、やはり1カ所2名では学習指導員は少ないと思う。しっかり増員すべきと考えるが見解を伺いたい。
→経験豊かなOBなど、教員資格を持った職員が対応しており、一時保護所の職員とともに、子ども一人一人の状況に合わせた学習支援を行なっているので現在のところ、増員する予定はない。
【要望】
現在のところは増員の考えはないとのことだが、それぞれの子どもは家庭でいろいろな
思いをして一時保護所にきており、生育歴も家庭環境も学習環境も違う。そういう中で一人一人に寄り添った丁寧な学習支援を行うには指導員二人は少ないと思う。今のところ、増員予定はないということだが、今後状況によってはぜひ、増員の検討をお願いしたい。
⑤在籍校の取り組みを教育委員会に伺う
子どもたちの学習権を保障するためには、一時保護されている子どもが在籍している学校における取り組みも大切です。学校や教育委員会では一時保護されている子どものためにどのような取り組みを行っているのか伺う。
→それぞれ児童相談所と連携を取り、その児童生徒が在籍する学校に円滑に復帰できるよう、学習教材の提供や面会による学習支援なども行なっている。県教育委員会では平成30年に発行した「児童・生徒ハンドブック」に、学校と児童相談所の連携の重要性や具体の取組例などを盛り込んでいる。今後も市町村教育委員会や学校に周知を図っていきたい。
⑥もう少し学校の取組を詳しく伺いたい
→基本的には一人一人に応じた学習教材の提供。一番親しい担任が面会し、児童相談所での学習状況を把握し、指導要録上の出席扱いとする形をとり、その後の学習意欲の向上につなげる取組を行なっている
⑦ 新年度、児童福祉司、児童心理司を増員するとのこと。人材育成の取り組みを伺う
昨年の9月の一般質問で、私は、困難を抱える子どもたちの権利を守るために必要な児童福祉司と児童心理司の増員を強く求めた。特に児童心理司は、国の配置基準が政令で示され次第、必要な人材の確保に取り組むとの答弁を知事からいただいていたが、来年度、児童福祉司と児童心理司を増員予定とのこと。 同時に、児童福祉司と児童心理司には高度な専門性が求められる。児童虐待相談が急増し、相談対応件数が増え続ける中、喫緊の課題である優秀な人材の確保や育成に今後、どのように取り組んでいくのか知事の見解を伺う。
→知事答弁
児童虐待は決して許されるものではない。急増する児童虐待相談に対応するため、平成29年度以降、児童福祉司を55人増員した。来年度もさらに体制強化するために児童福祉司や児童心理司を増員したいと考えている。
人材確保対策として、多くの方に受験していただくよう、福祉職や心理職の養成校に出向き、児童相談所や入所施設など幅広い職域がある本県の魅力ややりがいを伝えるリクルート活動を実施していく。養成校の希望に応じて学生向けの出前講座など引き続き取り組んでいく。
人材育成については、新任職員に対し、具体的な事例におけるグループワークなど実践的な研修を継続して行う。
児童福祉司を指導するスーパーバイザーの研修の充実、経験豊かな再任用職員を配置して新任の児童福祉司をサポートすることで専門性の向上に努めていく。
今後とも、児童虐待相談に迅速・的確に対応できるよう人材確保、育成を図り、児童虐待防止にしっかり取り組む。
意見要望
●昨年10月に行われたある大手新聞社の調査では、昨年度児童相談所を設置していた全国の計69自治体の児童福祉司のうち、2018年度に「うつ」などの精神疾患で休職した人が2、2%、57人に上ることが明らかになったとの報道がありました。母数が違い単純比較はできませんが、17年度の文部科学省調査で示された、多忙とされる教員の精神疾患の休職率0、55%の4倍に当たるとのことです。発症理由は「子どもの支援方針が対立している親とのやりとりに疲弊」「威圧的な保護者との対応による心理的負担」「業務量が多い」などである。
●昨年7月本県で取りまとめられた「神奈川県児童虐待による死亡事例等調査検証委員会」の報告書でも、児童相談所の組織管理体制の課題として、「専門性を高めるため、体系的な人材育成について検討するとともに、児童福祉司が疲弊しないよう職員を支える組織作りに力を入れる必要がある」と述べている。
私も、現場から若い職員をどう育てるのかが課題と伺っている。
児童福祉司と児童心理司を、増員配置するとのことですが、採用された児童福祉司、児童心理司が精神的に疲弊しないよう職員を支え、チームとして専門的な力量を高める体制を作るよう要望する。
●新たに弁護士に常時相談できる体制を整備することについて、ある弁護士さんは、複雑な案件にすぐに答えられるにはキャリアを積んだ人が必要と言っておられた。また、電話相談は複雑な案件の詳細を十分確認できないリスクもあるというお話も伺っている。児童の権利擁護について十分経験を積んだ弁護士を確保するとともに、今後の方向性としては常勤化の検討も要望して質問を終わります。