高津区久末に約4千㎡の神奈川県・中小企業従業員宿舎跡地があり ます。11年前に宿舎が閉鎖され、約10年前に県から活用について川崎市に照会があったものの,具体的な利用計画がない旨の回答を市がしていました。
9年前に地元から多目的施設並びに緊急防災施設の設置を求める請願が市議会に寄せられ,継続審査のまま審議未了・廃案になっていました。
神奈川県警がこの地に県警職員公舎を整備するという文書が地元に配布されたのが昨年の5月ですがそれまで,この土地は,県が一般競争入札を試みた【H15、16年】ものの購入希望者がいなかったという経過でした。
この県有地は丘陵地帯で,その周辺には,市営久末住宅と県営久末アパートをはじめ高齢化が大変進んでいる地域です。みなさん、助け合いながら生活しているものの,近年、介護が必要になったらどうしようと、老後の不安はますます大きくなっていくなか、この県有地に防災機能を備えた特別養護老人ホームを建ててほしいという要望がたかまり、署名活動が始まったと聞きました。
川崎市長と神奈川県知事あてに要望書を提出されています。
おりしも3月11日に大震災が起こり,その思いを改選後の市議会に請願としてあげられ、健康福祉委員会で審議されました。理事者として健康福祉局高齢者事業推進課のほか総合企画局広域企画課、総務局の危機管理室も出席しました。
私は,この地域の高齢化について事前に総合企画局の統計情報課に調査依頼したところ、平均年齢が川崎市・41,58歳、高津区・40,5歳、うち久末地域・43,08歳、うち市営久末・57,9歳、県営久末アパート・57,76歳という状況でした。
委員会で,高齢化率を質問したところ、川崎市・16,6%、高津区・14,75%、久末地域・22,28%と久末地域の高齢化が顕著でした。
次に、特養ホームは市内37か所、定員2964名ですが、高津区はたったの3か所、214名分、全市の7%分しか整備されていません。諏訪の陽だまりの園の整備以来,12年も0であり、しかもH25年度までの整備促進プランにも高津区内の具体化は、現段階で一つもないことを指摘しました。特養ホームは,全市展開で整備するとしていますが、デイサービスやショートステイなど在宅介護を支える施設でもある訳ですから、こんなに地域や区のアンバランスがあっていいはずがありません。特養ホームの地域や在宅介護を支える機能について質問したところ,「地域包括ケア」の役割を持つと考えるという答弁でした。高津区内の整備の必要性を強調し、特養ホームの整備に適した県有地がある久末につくって欲しいという要望は当然であると主張しました。
3つ目は、川崎直下型地震の起きる可能性が高まっているなかで、一次避難所で対応しきれない場合の対応をどうするか、危機管理室に質問。「近隣の公共施設を補完施設として避難所に当てる」という答弁に対し、久末地区には,久末小学校のほかは、老人いこいの家もこども文化センターも保育園等,公共施設がないことを指摘し、高台の市営や県営住宅から,高齢者が低地にある久末小学校まで避難するのは大変であり,防災機能を持つ公共施設がここに必要だと主張しました。
4つめは、昨年6月議会で、保育園や特養ホームを整備するさい、県有地の提供を求める意見書を、全会一致で川崎市議会から県知事宛にあげたこと、そして、市からも「H23年度県の予算編成に対する要望書」に、県有財産の貸し付け制度を創設される様要望していることをあげ,取り組みを質問しました。「貸し付け制度」創設のためにがんばって県と協議している。という答弁でした。なぜ過去に,県に対して具体的に要望してこなかったのかも質問しましたが,県は,買い取りでしか渡さない方針で、当時としては,市としても、土地を購入して整備するという方針ではなかったとのことでした。しかし、市内には,11件、のべ約3万5千㎡の市有地を県に無償で貸しているのだから、もっとがんばってほしいと要望しました。
最後に,県警職員公舎をPPP方式で整備するとのことについてです。答弁で、計画段階から民間事業者が行い、民間事業者に土地を無償貸し付けし,事業期間は41年、事業者の資金で建物を建てるのも,管理運営も全て行うというやりかたとのことです。金融機関から資金調達を考えた場合,長くて20年が一般的と言われている中、41年もの資金調達や返済計画は困難ではないか等たくさんの質問が企業から寄せられているとのことです。
既に募集が始まっています。成り行きはわかりませんが,41年先の経済状況等予測もつきませんから,これで事業が進むか私は疑問だと思わざるを得ません。
これはあとで気がついたのですが、ましてや、警察公舎の整備には無償で貸し付けるのに,市町村が、福祉の施設を整備するのに、それができないのか,はなはだ疑問です。
ほかの議員からもこの土地は率直に言って特養ホームの整備に適していると思ったと感想を述べられたり、県との協議についてのあり方等の質疑もされました。
取り扱いでは,私は,質疑をとおし、久末地区の高齢化が顕著であり、在宅介護を支える機能ももつ特養ホームが,高津区はあまりにもほかの区に比べ少なすぎる。久末には災害時一次避難所を補完する公共施設がほとんどないことから,せっかくある県有地は,住民の望む活用を最優先にすべきと考えることから,趣旨採択を主張しました。
ほかの会派は、住民の要望はわかるが、タイミング的に県警の公舎整備がここまで進んでしまっているからには,「不採択」という表明がされ,採決の結果、賛成少数(共産党の2名)で、不採択になってしまいました。
結果は不採択でしたが,質疑をとうし、防災施設を備えた特養ホームをという住民の要望はしごく当然であり,切実なことであること。県に対し、貸し付け制度の創設等、市はがんばるべきであること。高津区内の整備の必要性についてなどは認識してもらえたと思います。その意味で,地域の皆さんが、それこそ高齢者のみなさんががんばって署名を集められた意義は大きいと思います。その思いにこたえて、がんばらなくてはと思います。