このまちで子育て

「保育緊急5カ年計画」について9月議会でわかったこと―その2

2007年10月18日

公立保育園の民営化について
「保育緊急5カ年計画」に、公立保育園を4年間で20か園民営化する計画が新たに盛り込まれました。
保育事業と民営化についていろいろな角度から考えてみたいと思います。

●そもそも保育事業は1947年に制定された児童福祉法に基づく事業です。
その児童福祉法1条で『全ての児童は等しくその生活を保障され、愛護されなければならない』と定められ、保育に欠ける子どもについて、市町村の保育実施義務が明記されています。
児童福祉法第24条で、保護者の保育所選択権の尊重が明記され、行政は希望する保育所に入所させ、勝手に他の保育園に変えさせてはならないとし、定められた期間が満了するまで保育を保障する義務をおっています。

● 児童福祉法と同時期に人的配置や保育室の広さ、園庭、厨房などの守るべき環境設置について「最低基準」が設けられましたが、文字どおり、まさに戦後まもなくの最低の基準であり、将来、戦後の復興が成ったときには、大幅に改善しようとして、基準を向上させる義務もうたわれています。これまで、国に対し、自治体や保育関係団体からの最低基準の改善要望が繰り返されたにもかかわらず、改正されないまま、全国的にほとんどの自治体で、「最低基準」を超える人的配置が必要として加配がされてきました。

● 川崎の保育の歴史もまさに保育の質の向上をめざし、行政も一緒になってのとりくみがおこなわれ、民間保育園にも公私間の格差をなくす財政措置がとられるなか、公立と民間が車の両輪として市民から「子育てするなら川崎」といわれる公的な保育を担ってきました。ですから公立保育園は市の保育水準となり、民間の保育水準も一緒にひきあげられてきたのです。
しかし今回だされた保育基本計画改訂版には市の保育士の配置を国基準に照らし見直しすることを示唆しています。これでは私立保育園も公立と一緒に配置基準(水準)がひきさげられることになってしまいます。

● この間、法改正や規制緩和が行われました。川崎では、長い間「公・民」の保育が一体的に進められてきたにもかかわらず、「公・民」の運営費の比較が近年になって意識的にされはじめ、財政難を理由に公立保育園の民営化がされ始めました。

●民営化の理由は、より効率的で効果的な保育所運営のためと説明されています。効率的というのは、保育にかかるコストを削減する=人件費削減ということです。民間保育園を担う法人と公立の職員給料表、職員配置はほぼ同じですから、運営費・人件費の差は主に保育士の年齢差(平均年齢が公立のほうが民間より約10歳ほど高いといわれている)です。しかし、保育は経験をつんだベテラン保育士、若い人、中堅とバランスのとれた保育者集団が必要です。そして、民営化はある日突然、見慣れた保育士がいなくなるということがどれだけ子どもの心を不安定にするかという議論、児童福祉法24条で保育所を選択する権利、継続して保育を受ける権利の保障の観点からも保護者の不納得のまま民営化するべきではないという議論がこれまでされてきました。