4月14日、16日に臨時議会が開催されました。議案は5件で、そのうち、国民健康保険料の減額割合の改正、65歳未満の方の市民税の特別徴収にする年齢を拡大する議案、高校授業料の無償化に伴う改正の3件は賛成・承認しました。
殿町3丁目地区の中核施設用地のために市が23億円 で購入する議案については反対しました。
今回の土地取得は、羽田空港再拡張に伴う神奈川口構想の中核施設とするためとして、川崎市が都市再生機構から1.3ヘクタールの土地を約23億円で購入し「環境・ライフサイエンス」分野の産業拠点とするとしているものです。
共産党市議団は、今回の土地取得が、住民の福祉増進を図るべき自治体の役割に照らして、最優先に取得すべきものなのか、また自治体の産業政策として、市内経済の落ち込みを立て直すために最優先に取り組むべき課題なのかという観点で、議論しました。
中核施設にする第1段階は、市が土地を購入し、0.6ヘクタールを財団法人・実験動物中央研究所(通称・実中研)に50年未満、定期借地で貸付け(月142万円)、建物は実中研が建てる計画です。本来、実中研が都市再生機構から直接土地を取得することが可能なのに、わざわざ川崎市が購入したうえで貸し付けるという仕組みにしたのはなぜかとの質問に対し、事業計画の説明を繰り返すだけでした。さらに別の支援策で借地料も減額してやり、建物についてはイノベート川崎を使って3億円ほどの支援をしようとしています。
第2段階の整備は残り0.7ヘクタールを貸した土地に、民間ディベロッパーが建てた建物の床の一部を市が借り受け、そこに環境総合研究所と健康安全研究センターがはいります。ほかの床には、民間の研究所や事業所が入るという仕組みにする計画ですが、どこの企業や大学を誘致するのか、市が土地を買い取ってまで“誘致”する必要があるのかについてもまともな答弁がありませんでした。
浮き彫りになってきたのは、産業戦略として国が進める事業に飛びついて、わざわざ市が巨額な税金を入れて土地を取得し、民間に定期借地で安く貸し、しかも借地料も財産条例で減額して初期負担を減らしてやり、その土地に民間が建てた建物の床を市が市場の相場で借りるという、まさに企業には至れりつくせりの企業誘致の手法・構図です。
今後、第3段階も同じようなスキームで企業誘致を図るのではないかと思われます。市長は記者会見で「日本の成長戦略をけん引するような研究機関を集めたい。そうなればホテルやコンベンション等の提案も自然に出てくる」と言いましたが、現実には実中研が中核施設としてようやく位置づけられただけで、研究機関の立地も未定で、立地の可能性についても未知数です。それを前提にホテルだ、コンベンションだと構想を膨らまし、企業誘致のために次々と莫大な資金を投入していくことになる可能性が極めて高いことが明らかになりました。
今回の財政投入を「環境・ライフサイエンス」ということで、この分野の産業が我が国の国際競争力を高める未来産業として未来への投資としていますが、他都市でも自治体として取り組む意義・目的に疑問がでています。研究に支援していくことはともかく、産業として根つくことすらままなりません。こうした分野への自治体の参入については、慎重のうえにも慎重を期し、純粋に研究を支援するにとどめるべきです。
今なすべき自治体の産業政策は、ものづくりを支えた市内中小企業を最優先で支え、育て、活性化させることこそ重要です。
市長は「中小企業の活力向上に向けて総合的体系的に取り組んでいる」と答弁しましたが、殿町では財政条例をわざわざ適用して「固定費」である賃借料も減額してやるのに、中小企業から切実な要望がだされ、共産党市議団が中小企業支援の緊急対策として、一貫して求める中小企業の工場や家賃などの「固定費」補助については検討することもしませんでした。
2010年度の中小企業予算は、融資を除けば約10億円で一般会計の約0・2%でしかなく、今回の土地取得予算の半分以下にすぎません。
市内中小業者の営業・くらしを支える政策こそ、自治体が今一番力を入れなければならない分野です。市内中小企業中心の産業政策に転換することを強く求めるものです。
以上の立場からこの議案には反対しました。