川崎市は保育緊急5カ年計画で、公立保育園20箇所の民営化を平成24年度までに行なうとしています。一方、私立幼稚園の定員超過率は116%と政令市で唯一100%を超過しているにもかかわらず、公立幼稚園を全廃する議案を準備しています。子どもの環境がどうなっていくのか、保育園や幼稚園の入園が大変な実態をどう解決していくのか、大きな課題です。
兵庫県の西宮市が、公立保育園の「民営化」条例の3月議会提案を断念したことを知り、5月8日に視察を行い、西宮市役所の担当課、共産党西宮市議団、西宮市職労の3者からそれぞれ1時間ずつの予定でこの間の取り組みを伺いました。
5月9日は、46箇所の公立幼稚園がある神戸市の幼児教育の取り組み、考え方を伺ってきました。
答申書に「関係者と協議の場を設ける」ことが盛り込まれる
西宮市では・運営主体の規制緩和について ・公立・民間の役割分担と民間移管について ・民間保育所助成金のあり方など諮問内容5点について、社会保障審議会の答申書が平成17年6月にまとめられ、その後民間移管計画が平成19年7月に示されました。
答申に当たっての審議会の基本的な姿勢に「具体的な施策策定を行なう場合には、関係者と協議の場を設け、市民の保育サービスの向上に向けて具体的に協議することが大切であることを申し添えます」という一文がはいっています。このことがその後、関係者との協議なしに具体化させない力になったとのことでした。
民間保育所からも「補助金をけずるな」の強い要望が・・・
その背景には、計5回行なわれた審議会のうち、3回目には現場の意見を聞く会を設け、民間保育所、公立保育所それぞれ、園長、保護者、保育士など9人から意見聴取が行なわれたそうです。民間保育所からは平成18年度から民間保育所への助成金を削減するという市の方針に対し、助成金を削らないでほしいという強い意見、要望が出されたとのことです。その他、関係者に共通していたのは「子育てするなら西宮」を守るべきという観点だったことです。
公立保育所でも多様なニーズにこたえる公立改革が推進され・・・
「公立・民間の役割分担」では、役割をはっきり決めてしまうと、公立がない地域はどうするのか、公立の役割としてきた障碍児保育、虐待児童やDV家庭児童への対応をどこが担うのか。という議論が行なわれ、一方でこの間、公立保育所の改革が行なわれ、平成19年3月から公立で2園でしか実施されてなかった午後7時までの延長保育を23箇所全園で実施、平成19年1月から産休明け保育もゼロから22箇所で実施するなど予算をさほどかけずに、多様なニーズに公立も役割を果たす改革をおこなったことから、公・民の連携こそ大事で、公立保育所の民営化はするべきではないという議論が保護者を中心に市民にも広がったようです。
民営化の根拠だった財政難について、08年には321億円の財政赤字になると市長は説明していましたが、06年決算で約30億円の黒字で、財政に明るい兆しが見えてきたと議会で自ら発言されたことからその根拠も崩れたことが証明されました。
共通の一致点で運動の輪をひろげ・・・
財政が好転した今こそ、廃止した民間保育所の人件費補助の復活を、補助金を増額して、公私の格差を是正するなど保育所予算をはじめ子育て予算を増額すべきと市民にビラで訴え署名を呼びかけたそうです。
なんといっても父母の会連絡協議会、市職労をはじめ建交労や臨時保育士労働組合、無認可保育所連絡会などで6者懇が組織され、民間保育所の有志のかたがたも一緒になって「子育てするなら西宮」にふさわしい子どもを大切にする施策への転換をめざすという一致点で共感が広がり、市民の中へと浸透していったとのことです。
担当課は現状では保護者との協議、納得がえられないなかでは民営化を進められない。保護者の意見をきいたうえで、協議を進め、市の計画案をまとめていくとのことでした。
やはり答申書に「関係者との協議」が基本姿勢にもりこまれたことが、行政の基本的な姿勢として位置づけられていると思いました。