このまちで子育て

神戸市の公立幼稚園の位置づけと幼児教育の現状を視察しましたー報告その2 6月6日

2008年6月5日

報告が大分遅れてしまいました。5月9日の神戸市視察の報告です。
神戸市の平成19年度の就学前人口は本市より1574人多く78309人です。幼稚園数は川崎市・87園ですが神戸市は私立98園、公立46園、合計144園です。園の設置数が多く、そのうえ公立幼稚園が多いのにも驚きました。

創立121年、神戸で最も歴史のある市立神戸幼稚園【定員70人】を訪ねました
園長先生から説明を受けたあと園庭、園舎を見せていただきました。

1神戸市の公立幼稚園の位置づけと幼児教育の現状を視察しました 2神戸市の公立幼稚園の位置づけと幼児教育の現状を視察しました 

 

 

3神戸市の公立幼稚園の位置づけと幼児教育の現状を視察しました
園庭の広さにまずびっくり、次に緑の木々とその周りをゆっくり流れるぐるぐる池、そこにはザリガニがたくさんいて、こどもたちが「マイ竿」でザリガニつりを楽しめるのです。隣の大きな池にはにしき鯉などが泳ぎ、ウサギ小屋でウサギが飼育されていました。まさにこどもの楽園のような幼稚園です。子どもたちの心とからだを揺り動かす環境設定と保育の工夫がされていて、さらに「うちの園は定員がありません。もっと来ていただいてもはいれます」と園長先生の言葉でした。環境のすばらしさは市議団のホームページを見てください。

神戸市教育委員会から幼児教育についてお話を伺いました。

4神戸市の公立幼稚園の位置づけと幼児教育の現状を視察しました●神戸市は公立幼稚園が地域の子育て支援の拠点をになっています。
26園で園庭開放が実施され、46園、全園で地域の幼児と保護者を対象にした定期的な保育や教育相談を月4回程度行うなど地域の親子にとって身近な場所になっている。さらに自主保育も行なわれるなど、地域の子育て支援の拠点になっています。

● 障碍児受け入れも公立が中心、保育料の減免制度もあります。
障害児の受け入れは公立が中軸をにない(園児数約3千人のうち150人~160人)、かなり重度のお子さんも含め受け入れています。
入園料は6300円、保育料は年額12万円(1万2千円の10回払い)この料金でも収入基準がAランク【生活保護世帯】は全額免除で無料、Bランクは3分の一の4千円に。Cランクは半額の6千円に減額され、現在、減免制度の利用者は全体の1割程度とのことでした。

幼稚園教育の基本方針「神戸市幼稚園教育振興検討委員会報告書」から・・
● 平成7年に発表された当報告書では、幼児教育の大切さから、当時約14%いた在宅児を含めた希望する全ての4歳児が、公私いずれかの幼稚園に就園できる体制をつくりあげていこうというのが、当検討委員会の大きなテーマになっていま
● 不公平感を解消するために「公私の選択肢を全市域に広げ」の方向性
「公私の選択肢のない」地域があることを問題にして「市立幼稚園はその立地が偏在しているうえ、園区の設定により、市立に行きたくても行けない(公私の選択肢のない)地域があり・・・園区制度の見直しも含めて根本的な検討が必要である」としています、どの地域からも公立にかよえるように改善して公私の選択肢を全市域に広げ、不公平感を解消する考え方なのです。
●保育料の公私間の不公平感の解消は、私立幼稚園への就園奨励助成金の引き上げで格差縮小に努める
報告書では、さらに「競合する公・私幼稚園の数が非常に多く、また公立幼稚園との保育料の格差がある中で、私立幼稚園の保育料を低く抑えざるを得ないという現状」と分析し、「保育料の格差の存在は特に公私の選択のできない、あるいは選択の範囲の限られた地域の保護者にとっては大きな不公平感をもたらすことになる」と指摘し、「私立幼稚園の就園奨励助成金の引き上げなどにより公私間の保育料の格差縮小に努める必要がある」と示しています。

川崎の定員超過率116%なのに「私立で受け皿が足りている」といえるのでしょうか
川崎市は、かつて20園あった公立幼稚園を園児数の減少するなか次々廃園し、2園を研究実践園として存続させました。しかしそこに通えない父母に不公平感があるという理由づけをしてその2園もなくし、不公平感を解消するとしました。公私の選択肢を全域でなくす方針です。選択肢を全市域に広げるという神戸市との発想のちがいはどこからでてくるのでしょうか。川崎市は子どもの発達・環境や父母の生活実態よりも、不公平感をなくすという理由づけで「コスト削減」最優先の姿勢がみえるのはとても残念です。

ましてや人口急増によって、07年度の川崎市の私立幼稚園児は、定員より3253人超過し、定員超過率116%。政令市で100%を超えているのは川崎市だけです。「4歳児からでははいれない」「兄弟枠がないとむずかしい」とまで言われている実態です。11月に入園願書を家族手分けして何箇所ももらいにいき、提出日は早朝から並ぶ。350人の定員に500人ちかく就園している幼稚園もあるのです。

こうした実態があるのに、「私立幼稚園で受け皿が足りている」と過密化を問題にしない川崎市の姿勢は納得がいかないと改めて思いました。確かにいっとき公立幼稚園の定員割れは進みました。しかしここ数年実情が変わり、人口急増にともない幼稚園は不足しているといえます。少子化のなかでは、私立にはリスクが大きい幼稚園の新設ですから、自治体が責任を持ってになうべきです。
神戸市を視察し、地域の実情にあわせて自治体として幼児教育の場をきちんと保障し、公立幼稚園を設置すべきとあらためて強く思いました