9月27、28日、市民委員会において議員有志より「(仮称)川崎市子どもを虐待から守る条例」(骨子案)がだされ、審議されました。
児童虐待は児童の人権を著しく侵害し、子どもの心身の成長発達に著しい被害をもたらすもので決して許されるものではありません。子どもを虐待から守り、虐待をなくす取り組みは大切です。
国は、この間、2000年に施行された「児童虐待防止等に関する法律」を、何回も改正し、児童相談所の権限強化等も盛り込みました。法の目的に「児童虐待は著しい人権侵害」と明記し、国と地方自治体は、児童虐待の予防、早期発見から受けた児童の保護及び自立の支援まで、各段階において「必要な体制の整備に努めなければならない」と、国と地方自治体に対し責務を課しました。
市の条例化にあたっては、その責務規定をしっかり果たす体制の具体化が求められていると思います。
審議は始まったばかりで内容についてはこれからですが、驚いたのは提案者の方々の「市民参加」についての認識でした。
市民委員会で、我が党の議員が「子どもを虐待から守るのは大事なことだし市民の関心も高い。提案された骨子案について、児童虐待防止に取り組んでいる方々、教育者や保育者、何よりも市民の声をどのように聴いた上で具体化したのか」「条例の制定は何よりも市民参加で行うことが必要だ。骨子案を市民に提案して意見を聞くことは考えていないのか」と提案者に質問しました。
その答えは「私たちプロジェクトのメンバーは市民の意見を聴いてきた。児童相談所にも行って聴取してきた」「今後、市民に対し説明責任を果たし対話を進めていく」と答えました。条例化してから説明し意見を聴くという答えに驚きました。
市(市長)が、議会に提案する条例案は、素案の段階でパブリックコメントを行い市民の意見を聴取し、その後、市民意見とそれへの対応を公表してまとめます。
そして市長は、最終案議会に提案し議員が審議します。市民意見の反映や周知の点等で問題はあっても少なくても、その段階を経るのです。では議員提案は自分たちが聴いてきたから、案の段階で市民意見を広く聴くことをしなくてよいのか、ということは成り立たないと思うのです。
また別のメンバーは「パブリックコメントを行うことも考えた。しかし議員提案のパブコメの手法が決まっていないので時間がかかる。今は一刻も猶予できないので早くつくるのが市民の利益にかなう」と答えました。
条例を一刻も早くつくることが市民の利益にかなうと言いますけれど、市民にその骨子について知らせずに、利益にかなうと誰が考えるのでしょうか。有志の皆さんが利益にかなうと考えたといいますが、知らせずにいて決めてしまっていいと考えるのでしょうか。
特に、今回提案された骨子案は、市民にだけ責務「通告義務を怠らないようにしなければならない」を課しています。児童虐待防止法では、市民に責務を課していません。法律が責務規定を課しているのは、国と地方自治体に対してです。だとしたら、よけいに案の段階で骨子案の中身、意図することを周知し意見を聴取すべきです。
昨年4月に,虐待死亡事例をだしてしまった本市では、児童福祉審議会がその事例の検証を行い、再発防止の貴重な提言を行いました。その提言は、まさに法律の「地方自治体は、必要な体制の整備に努めなければならない」の責務規定に照らしてどうだったかを検証したのです。児童相談所と区保健福祉センターの体制整備の強化と連携等を報告書のなかで繰り返し提言しています。
急ぐべきはこの対策の具体化です。
私たちは、児童虐待を防止するための条例をつくるなら、市民や関係者、なにより子どもの意見を聞いて,みんなで作り上げることが大事と考えます。
10月1日、10時から引き続きの質疑が行われます。誰も知らないうちに、条例が制定されることのないように声を上げることが必要と思います。