2月9日(土)、私達の市議団は「人間の尊厳が憲法の権利=保護基準得を引き上げたドイツに学ぶ」の標題で講演会を開催、講師は大阪市立大学大学院教授の木下秀夫先生です。私は司会を担当しました。
先生のお話はとてもわかりやすく勉強になりました。
2013年度国の予算案から2年かけて、生活保護基準額を1割も引き下げていくことが提案されています。これは生活保護を受けている方々の問題だけにとどまりません。住民税非課税世帯から課税世帯になる世帯がうまれる。最低賃金を上げない。修学援助、国民健康保険料や介護保険料の減免、保育料減免、障害者福祉サービス利用者負担の軽減などの対象者が狭められるなど、社会保障全体に影響します。
なかでも一番大きな影響を受けるのがこどものいる生活保護世帯とのこと。さらに受給していない子育て世帯にも基準額の引き下げは影響します。経済的に苦しい家庭の小中学生に学用品費や給食費等を支給する「修学援助」は約165万人が対象になっていますが、生活保護基準額を支給の目安にしているので、子育て世帯の保護費が大幅な減額になることで修学援助が打ち切りとなる世帯がでてしまうなどなどです。
引き下げの根拠がひどいと思いました。当初は一般低所得世帯と比べた検証結果をもとに減額するとしていましたが、これだけでは減らせる保護費が少ないとして、「過去の物価下落分」を反映するという理屈が持ち出され、一気に削減額が積み上げされたということです。物価下落というけれど下がったのは、家電、パソコン等で、日々必要な食料品や日用雑貨は下がっていません。
経済対策として、物価を2%あげると宣言し、現にあがり始めているのに最低生活費を切り下げるのは過酷なことです。そして生保の予算全体を下げるということは新たな受給者の受け入れも厳しくなるということです。今後も失業者や、賃金切り下げ等、生活保護を必要とする世帯が増える可能性が十分あるのにそれでいいのか問われる問題です。
どれだけの影響を及ぼすのか、社会全体がどうなるのかを考えるべき。今でも孤立死が続出しているのに貧困の問題を正視しなくてよいのか。貧困自体がよくならないのに保護基準額を切り下げ、予算を削れば保護を受けられない貧困者がでてくる。社会としてそれでいいのかと、木下先生はお話しされました。
先生は、人口が日本の3分の2のドイツの生活保護受給者は日本の約3倍の600万人である。ドイツでは生活保護費の基準額が低いとして裁判に訴え、憲法裁判所は基準額の決め方に問題があるとして、基準額全体を違反と判断。政府は基準額の決め方を変え、基準額も増額したとのことです。
日本では憲法25条で国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を明記しています。貧困と格差の拡大が深刻なのに、基準を下げるということは本当に社会のあり方として、許されないことだと改めて思いました。