12日の共産党市議団の代表質問で、近年川崎で急速に進む「保育の株式会社による市場化」の問題点を追求しました。
現在、市内の認可保育園は211カ所、そのうち株式会社立は68カ所。3割を占めます。職員の平均勤続年数「1年」が16園もあり、そのうちの15園が近年急激に箇所数を拡大している(株)日本保育サービスと(株)こどもの森の2社で占められていることは6月議会で明らかにしました。
中には開設後5年、3年経過しても「1年」という園もあり、離職率が高く相当人件費を削っているのではと、私はこの間、2012年度決算で調査してきました。職員の低賃金、労働環境の悪化、ひいては保育の質に重大に関わるからです。
認可保育園には国や市から「保育所運営費」いわゆる公金が入りますが、人件費や給食費、教材費等子どものために使われなくてはならないものです。
運営費に占める人件費比率が40,7%!
しかし調査でわかったことは、この2社の経営する60名定員18カ所の運営費に占める平均人件費比率はなんと40,7%。90名定員は50,4%という低さに衝撃をうけました。ちなみに社会福祉法人の運営する保育園は60名定員は64、9%、90名定員では73,5%ですが70%前後がこれまでの常識であり実態です。2社は圧倒的に人件費を押さえ込んでいることがわかりました。
公金から多額の国債の購入、株式本社への上納金!
それでは他のお金は何に使われているかと調査しました。市内12園を経営する「こどもの森」系列は、12園の運営費総額10億4432万円余に対し、「投資有価証券取得費」これは国債を購入したとのことですが総額1億1850万円も支出されているのです。これは企業が参入しやすくするために、国が「リスクの大きい株式投資などは認められないけど安全確実な国債、地方債は買っても良い」と規制緩和したからです。しかもこれは上限額の定めがないというのですから、違法ではないと言っても市民は納得できるものではありません。さらに、本社への上納金いわゆる「租税公課」が1億1591万円余にものぼります。上納金の上限は、最大、国基準の運営費の3ヶ月分まで支出できるというのです。
関連会社に多額の講師派遣料
市内22園を経営する「日本保育サービス」系列は、親会社である保育企業グループ「JPホールディングス」の関連会社からリトミック、体操、英語の講師の派遣をうけ、講師料を総額1億300万円余支出していました。講師派遣会社として顧客獲得の宣伝も、場所の確保も不要で、確実に収入が入る仕組みではないでしょうか。本社の「JPホールディングス」に資金が環流する仕組みではないかという疑念をもたざるをえません。-
株式会社には監査は及ばず、使途の後追いができない!
運営費は公金なんだから後追いしチェックすべきであり、その仕組みを作るべきと質問したのですが、有価証券についての監査は取得や資産への計上が適切かどうかだけの監査とのことですから、何に使ったのか等の後追いはできません。
本社への上納金については、社会福祉法人の場合は本部に上納金をあげたとしても法人の本部にまで監査を行います。しかし、株式会社については保育所からの上納金については行政の監査は及ばず使途について後追いはできません。だとしたら企業参入を進めるべきではありません。
株式会社が参入していない政令市は5市ある
20政令市のなかには、株式会社が現時点で参入していない政令市は5市あります。北九州市は、株式会社参入での保育内容に対する不安から、160カ所の認可保育園の内、民間132カ所はすべて社会福祉法人となっています。
名古屋市でも同じ理由から認可保育園345カ所のうち、公立保育園を除く225カ所は社会福祉法人等となっており、株式会社は1カ所もありません。
川崎市も、保育の実施に責任をもつ自治体として、企業参入を進めるべきではないことを強く求めました。そして市は今からでも是正を指導すべきです。自治体のあり方が問われる問題と思います。
国は「最小のコストで最大の効果をあげる」として「保育の市場化、産業化」をますます進めようとしています。私はゼロ歳から就学前まで幼いこどもが育つ環境が最小のコストでいいはずがないといつもこれを聞くと怒りがわきます。しかもその「最小のコスト」といっているなかから、企業が儲かる仕組みをつくるなんて、これは「最大のコスト」だ!と。