このまちで子育て

決算審査で「保育の市場化」の問題を告発

2014年9月29日

9月25日、こども本部の2013年度の決算を審査する分科会で、昨年の決算議会に続き,近年川崎で急速に進む「保育の市場化」の問題を告発しました。

2013年4月現在の認可保育所は221園、そのうち、株式会社立は64園・29%を占めます。昨年の決算議会でわかった事は、株式会社立保育所の保育士の勤続年数が非常に少ない事でした。

昨年の議会では,2012年度の職員の平均勤続年数が「1年」の認可保育所は16園もあり、そのうち15園が近年市内で急速にカ所数を増やしている企業率の2社で占められており、「保育所運営費」に占める人件費の比率が40,7%だったということに衝撃をうけました。(それまでは7割前後でしたから)

13年度は「1年」未満が半数に減ったものの7園あり、すべて企業立で前年と同様の2社の保育所が5園ありました。また、開設後5年経過しても「1年」という企業立保育所が1園あり、離職率が高い事がうかがえます。運営主体別に平均勤続年数をみると、社会福祉法人が約6,7年、株式会社は約3,0年でした。

認可保育園には国や市から「保育所運営費」,いわゆる公金がはいります。これには保護者の皆さんから徴収する保育料が含まれています。本来、人件費や給食費、教材費等子どものために使われなくてはならないものです。乳幼児の保育は安定性と継続性、専門職種の配置、経験を積んだ保育士と若い保育士がバランスよく配置される事が大切です。働き続ける事の出来る労働環境は、保育の質の向上のために不可欠です。

60名定員の認可保育所の運営費に占める平均人件費比率

  社会福祉法人 株式2社
平均人件費比率 66.1%(前年64.9%) 46%(前年40.7%)
最低人件費比率 53.3% 39.1%
最高人件費比率 81.3% 52.7%

以上のようになっています。

前年より高くなったものの、株式会社の最高比率が社会福祉法人の最低よりも低いという状況です。

公金から多額の国債の購入、株式本社への上納金!

それでは他のお金はどこに使われているか昨年同様調査しました。

市内で13園経営する1社は、事業活動収入(施設賃借料補助額を除く。ほとんどが保育所運営費)総額は約10億円で、内【有価証券取得支出額】は約6,800万円(前年は1億1,850万円)で国債を購入したとのことですが、これは、企業が参入しやすくするために、国が「リスクの大きい株式投資などは認められないけど安全確実な国債、地方債は買っても良い」と規制緩和したからです。しかもこれは上限の定めがないというものです。

さらに本社への上納金いわゆる【租税公課】が前年より1,709万円増えて約1億3,300万円です。上納金の上限は、最大国基準の運営費の3か月分まで支出できるというのです。

公金から多額のもうけを捻出できる。人件費比率を押さえ込み保育をもうけの対象にする,保育の産業化、市場化をすすめる国の規制緩和は、違法ではないと言いますが納得できるものではありません。

関連会社に講師派遣料

市内23園を経営するもう1社は、親会社である保育企業グループの関連会社からリトミック、体操などの講師の派遣を受け、講師料を約9,200万円支出していました。講師派遣会社として顧客獲得の宣伝も、場所の確保も不要で確実に収入がはいる仕組みではないでしょうか。調理業務委託料も2億3,400万円です。資金が本社に還流する仕組みではないかという疑念をもたざるをえないものです。

株式本社への監査は及ばず使途の後追いが出来ない

昨年の議会では、運営費は公金なんだから後追いしチエックすべきであり、そのしくみをつくるべきと質問したのですが、有価証券についての監査は取得や資産への計上が適切かどうかだけの監査との事ですから、何に使ったのか等の後追いは出来ないとのことでした。

本社への上納金については、社会福祉法人の場合は本部に上納金を上げたとしても、法人の本部にまで監査を行います。しかし、株式会社については、保育所からの上納金については行政の監査は及ばず使途について後追いはできないということでした。だとしたら企業参入による市場化を進めるべきではありません。

昨年の決算議会で、監査の徹底を求めた事に対し、こども本部長は「保育所運営費の決算について、適正な執行により適正な保育所運営が確保される事が大前提なので、指導監査などにより確認及び指導を徹底して参りたい」と回答しました。今年の答弁は「今後、運営費の使用目的や他の会計などへの経費充当が適切であるかを確認し、問題があれば是正を求めてまいります」でした。

子ども05人件費比率をもっと高めて,安定して働き続ける事の出来る賃金や労働環境をつくることが、保育の安定性と専門性をたかめることにつながります。