このまちで子育て

国・県,市有地を活用して思い切った認可保育所の増設を

2010年7月31日

    遅くなりましたが川崎市議会2010年第3回定例会〔6月議会〕の日本共産党代表質問より「保育園の待機児童解消」の質問を抜粋して報告します。

(初回質問)
保育事業についてですasagao-ms
今年4月の待機児童が昨年より363人増えて1076人に。なんと昨年の1.5倍、一昨年の約2倍と、認可保育園の不足が浮彫りになりました。
昨年の入所申請数は予測より3年も早く到達し、待機児童も713人にのぼったことから急遽、07年に策定された「保育緊急5ヵ年計画」が改定されました。今後3年間の入所申請が毎年1000人ずつ増加すると見込み、3年間で3千人の定員増を図ることとしました。私たちは、経済状況の厳しさからますます保育ニーズは高まるとして5千人の整備計画が必要と求めましたが、指摘してきたように、改訂初年度で入所申請は1000人をはるかに超えた1648人にのぼり、待機児童も増えてしまったわけです。

1998・2007年を比較した国民生活基礎調査によると、年収300万円未満の収入階層は、18歳未満の子どものいる30代の世帯主の比率が1997年、9.4%から、2006年は13.9%に増えました。こどものいる若い世帯の貧困の増え方が激しくなっています。

待機児童1076人中、これから仕事を探すEランクの待機は427人、約4割です。入所できなければ仕事に就けず収入が増えない、困窮から脱出できません。保育所がないために、子育て中の若い世代が就職できない、仕事を失い生活苦に陥るなどという事態は政治の責任で一刻も早く解決しなければなりません。本来、ランクをつけて振り落とすのでなく、申請する人すべてが入所できるよう整備することがどうしても必要です。

こうしたことからも、今後1000人ずつの入所申請の増加見込みを直ちに見直すべきと考えますが伺います。そのうえにたって、今年度中の緊急対策を早急に講じることと来年度以降の認可保育所の整備計画も大幅に増やすべきと考えますが伺います。

緊急増設のテンポを抜本的に引き上げるには、土地の確保が不可欠です日本共産党の国会質問で『国有地の活用』を求めたのに対し、政府も「前向きに検討する」と答え、「国有財産法では、国有地の購入・貸付は時価で行われ、保育や介護事業では、手が届かない。売却・賃貸の仕組みを検討すべき」との質問に、長妻厚労相は「国民的課題なので、できる限り利用しやすい料金になるよう財政当局に要請したい」。国有地の売却情報を早い段階で提供することについても「指摘を踏まえて検討したい」と答弁しました。

認可保育所の用地確保にあたっては国有地・県有地の利用ができるよう国・県に働き掛けるべきと考えますが伺います。上下水道局など企業会計の部門において活用できる土地はないのか、あれば活用すべきと考えますが伺います。さらに民有地に認可保育所を新設する社会福祉法人に、土地の手当てに対する補助制度の拡充について伺います。同時に一定の基準を満たし、待機児受け皿の実績のある認可外施設から認定保育園への移行を望む場合、認定化を進めることも必要と思いますが伺います。

(こども本部長の答弁)
保育事業についての御質問でございますが、はじめに、保育所利用申請者数についてでございますが、本市におきましては、平成19年以降、急速に人口が増加しておりまして、これに伴い就学前児童数も増加しております。
    また、核家族化の進行や価値観の多様化などの社会の変化や景気の動向なども相まって、保育ニーズが高まっておりまして、利用申請者数の増加傾向はしばらくの間、続くものと考えております。
   さらに、潜在的な保育ニーズにつきましては、核家族化の進行や価値観の多様化、保護者の働き方の多様化などから、深化・複雑化しており、景気の動向などにも大きく影響を受けることから、待機児童の解消年度を前提とする正確な目標量の設定は困難なものと考えられます。
    次に、認可保育所の整備についてでございますが、本年3月に「保育緊急5か年計画(改訂版)」を策定し、本年4月において、認可保育所で1,070人の大幅な定員増を図ったところでございます。
    また、計画では、平成22・23年度におきましても、1,000人を超える大幅な定員増を予定しておりまして、この計画の着実な推進を図ってまいりたいと存じます。
    次に、認可保育所の用地確保についてでございますが、保育所の整備には、一定程度の面積が必要となるところでございまして、その場所につきましても、将来におきまして継続的な保育需要が見込まれる地域であることが望ましいと考えているところでございます。 
国や県の用地でそのような土地がある場合には、利用に向けた働きかけをしていきたいと考えております。 また、本市の企業会計部局が所管する土地で適した土地がある場合には、利用に向けた調整をしてまいりたいと考えております。
   次に、保育所の用地に係る補助制度についてでございますが、民有地等を借りて、保育所を運営する場合につきましては、保育所の健全運営に資するよう、土地の賃借料を補助しているところでございます。
   次に、認可外保育施設についてでございますが、本市では、「認定保育園」や「家庭保育福祉員」さらには、待機児童対策として「おなかま保育室」や「かわさき保育室」など、利用者のニーズに応じた様々な認可外保育事業を展開しております。
今年度に策定する「(仮称)新・保育基本計画」の中におきまして、こうした認可外保育事業の推進につきまして検討してまいりたいと存じます。

(再質問)  
答弁では、正確な目標量の設定は困難ということです。しかし入所申請数の増加は予測の1,000人を大きく超えた1,648人となったわけです。このことは、Eランクの待機児童数が多くなっていることからわかるように、深刻な雇用破壊が進む中、子育て世代の困窮が広がり、今すぐにでも預けて働かざるを得ない母親が増えているからではないでしょうか。
ohanasi昨年Bランクで認可保育所に入所不承諾だったため、お子さんをおなかま保育室に入所させたものの、幼児になってもBランクではとても認可保育所に入所できないため仕事を辞めた。夫も不況のために減収になっており、貯金をとりくずしているという事例があるなど、改定版の計画だけでは、子育て世代のセーフティーネットの役割にとてもこたえることはできないと考えます。
2010・2011年度、1000人を超える大幅な定員増を予定しているという答弁でしたが、2010年度1070人、2011年度1115人の定員増では、今年4月の実態からも不足は改善できないのは明らかです。整備計画を大幅に増やすべきですが再度伺います。

認可保育所の用地確保について、答弁では、国や県の用地の活用について「そのような土地があれば利用に向けた働きかけをしていきたい」ということです。私たちの調査では、何ヵ所かの用地があることがわかりました。すでに要望が出ている県用地を含め、国や県に対し、働きかけを早急に行うよう強く求めておきます。
また「本市の企業会計部局が所管する土地で適した土地がある場合には、利用に向けた調整をしてまいりたい」ということです。本市は川崎市財産条例で2002年度から21か所市有地貸与で保育所を整備してきました。上下水道局所管の未利用地などが具体的にありますので、こども本部として、早急に調査し、活用に向けた調整に入るべきですが伺います。

(こども本部長の答弁)
    保育事業についての御質問でございますが、はじめに、保育所の整備につきましては、「保育緊急5か年計画(改訂版)」の着実な推進を図るとともに、引き続き、保育所の定員超えや、本市の認可外保育施策の活用などに努め、できる限り、保育受入れ枠を確保してまいりたいと存じます。
    また、今後につきましては、本年度に予定しております「(仮称)新・保育基本計画」の策定の中で、国の保育制度改革の動向や社会経済状況の変化も勘案しながら、第3期実行計画や次期行財政改革プランとの整合性を図り検討してまいりたいと存じます。
   次に、保育所用地の確保についてでございますが、企業会計部局が所管する未利用地等で、保育所整備に適した用地がある場合には、所管部局と利用調整をしてまいりたいと存じます。

(阿部市長の答弁) 
    用地の確保についてのお尋ねでございますが、子育て環境の整備や、高齢者の支援など、市民生活の安定の確保に必要な市民サービスを着実に提供することは、地方自治体の責務として、大変重要であると考えております。
   こうしたことから、本市では、保育受入枠の拡大に対応した「保育緊急5か年計画」を改訂するとともに、高齢者が住みなれた地域で安心して生活できる環境づくりに向けて「特別養護老人ホーム整備促進プラン」を策定し、公有地の積極的な活用と民有地による整備を併せて進めることにより、計画を推進しているところでございます。
   今後も、こうした取り組みを進め、市民生活の安定確保に向けて、市民サービスを着実に提供してまいりたいと存じます。

(再々質問)  
保育事業について市長に伺います。
保育所の整備計画の見直しを求めたことに対し「保育緊急5ヵ年計画改訂版の着実な推進を図るとともに、引きつづき、保育所の定員超えや、本市の認可外保育施設の活用などに努め、できる限り、保育受け入れ枠を確保していきたい」という答弁でした。
siki_natu01s_c市長は、市長選挙のマニフェストで「保育所待機児童ゼロへ」を子育ての第1あげました。保育緊急5ヵ年計画の整備計画を見直し、改訂版を出しました。しかし、実態は改訂初年度で入所申請の増加は予測の1.6倍化、待機児童も昨年の1.5倍、1昨年の2倍になったわけです。2011年度の申請も今年より少なくなるとは到底考えられません。人口増加と子育て世代の雇用実態、生活実態から、保育ニーズが増加しているという社会状況の動向に沿って、早急に、申請数とそれにみあう整備計画の増加を盛り込まない限り、公約の「待機児童ゼロへ」向かわないと考えます。市長として公約の実現にどう責任をとるのか伺います。
改訂版では、2010年度の整備計画は1070人ですが、その内訳は市有地貸与方式で認可保育所3ヵ所290人、民営化1ヵ所により30人、認可保育所1ヵ所60人に対し、民間事業者活用型が15ヵ所、690人で、整備計画全体の64.4%を占めています。民間事業者活用型ではビルの一角にならざるをえず、こどもの環境から考えれば、園庭のある認可保育所の整備に、可能な限りの整備を追求すべきです。
横浜市では、2004年度から2006年度までの3年間で市有地の無償貸し付けにより91ヵ所新設しました。そのうえ、待機児童解消へ向け保育所整備を加速させるために国有地の無償貸し付け制度の創設を要望するという新聞報道が先日ありました。本市でも上下水道局所管の未利用地等の可能性があるのですから整備計画の見直しをすべきですが伺います。

(阿部市長の答弁)
   保育所の整備についてのお尋ねでございますが、本市におきましては、人口の急速な増加とともに、核家族化や価値観の多様化など子育てを取り巻く環境の変化から、保育ニーズは年々高まっております。 
   こうした高まる保育ニーズに対応するため、本年3月に、「保育緊急5か年計画」を改訂して、整備目標量等を見直し、平成22・23年度において、認可保育所で、毎年1,000人を超える定員増を図っていくこととしたところでございます。
この整備にあたりましては、市有地貸与による整備のほか、新たに「民間事業者活用型保育所整備事業」を構築いたしまして、保育ニーズの高い地域に、単年度で整備するとともに、利用申請の最も多い1歳児の定員枠の拡大を図り、待機児童対策を進めるものでございまして、この計画を着実に推進してまいりたいと存じます。また、現在、国におきましては、保育制度改革や地方分権改革について議論がされておりまして、これらの動向も見据えながら、本市の保育施策の方向性を示すため、本年度には「(仮称)新・保育基本計画」の策定を予定しているところでございます。
計画の策定にあたりましては、子育てを社会全体で支える仕組みづくりを視点といたしまして、認可保育所の整備手法や認可外保育事業の充実など、様々な方策を検討し、待機児童の解消に向けまして、積極的に取り組んでまいりたいと存じます。

(最後の意見)
    先ほども指摘しましたように、市長は市長選挙のマニフェストで「保育所待機児童ゼロへ」を公約したのですから、その責任は大変重いものです。
    まちづくりで拠点開発を推進し、人口流入を誘導し続けてきたの       も市長です。 
   景気動向の変化や雇用破壊が進み子育て世代の困窮が広がるなかで利用申請が増加したわけですが、市長もこうした傾向はしばらく続くとの認識を示しました。だとするなら、認可保育所の整備目標を実態に見合うよう思い切って引き上げることこそ求められています。
       そして、引き上げた整備目標を確実に実現していくうえで重要な要となっているのが、用地の確保です。この点で2004年から2008年までの5年間の川崎市の用地取得実績を福祉関係施設と企業誘致など拠点開発の比較でみると、福祉関係が2,335㎡、24億円に対し、企業誘致など拠点開発関連は7万1,435㎡、322億円で、あまりにも福祉関係の用地取得が少なすぎます。自治体の使命である「住民福祉の増進」からすれば、福祉関係の用地取得にこそ全力をあげるべきです。国・県有地だけでなく、上下水道局所管の未利用地などの可能性を最大限に追求すべきです。

認可保育所の整備が飛躍すれば、地域密着の公共事業で地元の建設業者の仕事が増え、福祉施設で働く人の雇用が増え、施設で必要な物品の調達が地元商店街に回るなど、地域経済も活性化します。そうしたことも視野に入れながら、公約実現に全力をあげることを市長に厳しく求めて、あとは委員会にゆずり、私の質問を終わります