このまちで子育て

保育制度を大本から変える 政府のすすめる「子ども・子育て新システム」

2010年9月7日

●現行の保育制度は

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現行の保育制度は、児童福祉法で国や市町村の保育の実施義務が明確に位置づけられ、「保育所最低基 準」により、職員の配置基準や保育室の面積など全国どの地域でも最低守るべき基準が定められ、全国どこでも等しく保育の質が保障されています。保育料においても保護者の所得の格差が子どもの受ける保育の格差につながることのない「応能負担」を原則としています。「公的責任」「最低基準」「応能負担」という3つの福祉の必要条件を柱とした保育制度です。

増加する保育所待機児童問題は、必要な認可保育所をつくってこなかったのが原因です。だから、認可保育所を緊急増設することこそ解決の道なのに、政府は社会保障削減路線の中で、待機児増加を逆手にとって「保育園ができないのは制度が悪いからだ」といって、現行制度を根本から変え、新しいシステムをつくるとしています。

政府は6月、「子ども子育て新システムの基本制度案要綱」を決定しました。 
国民や子育て世代が何も知らされず、議論も不十分なまま、2011年に児童福祉法などの関係法の改正を行い、2013年からの実施をめざすとしています。おおもとからの制度の改変です。検討されている内容を勉強しましたので紹介します。

公的保育制度をなくし、保育を市場化する新システムでこどもはしあわせですか

1・「子ども・子育て新システム」で保育を“もうかる市場”に 

お月見

新システムは、経済成長戦略の一環として提案されており、政府の「新成長戦略」や「産業構造ビジョン」は、幼稚園も含めた保育・子育て分野を市場としてとらえ、この分野で「稼ぐ」ことを打ち出しています。待機児童増加を「行政の責任」で解決するのでなく、ビジネスチャンスととらえて市場化し、公的責任の大幅後退の中で保育を営利と競争に投げ込んでしまう、まさに子どもの権利や発達よりもうけを優先するシステムと言えます。

2・入所は直接契約で・・・はいれないのも自己責任とはひどい
問題の第1は、子ども園(4を参照)と直接契約する制度になることです。市町村の仕事は、介護保険のように要保育度認定と費用・給付の支払いになり、父母は自分で園を選んで契約し、認定された時間分の保育サービスを受けます。入所先の確保は保護者の自己責任で施設と直接契約し、「どの園もいっぱいで、はいれない」と言う人がでても自己責任ということになり、保育実施義務がなくなった自治体は責任をとりません。要保育度が決められても保育を受けられる保障にはなりません。

3・応益負担で受ける保育に格差がうまれる
問題の第2は応益負担を制度の基本としていることです。保護者の所得にかかわりなく、サービスに応じた保育料となります。応益負担は、保護者の所得の格差が保育の格差につながり、サービスの利用を抑制せざるを得ない事態や保育料を払えないために入所できないことも起こりえます。

4・就学前の施設を「子ども園」に一体化

身体測定

問題の第3は幼保一体化の問題です。保育は要保育度により、保護者の就労時間に応じ、曜日や時間がまちまちになるので、一日の生活リズムに応じた保育ができなくなります。これまで保育実践の中で積み上げてきた、日々の共同的な生活や遊びに根ざして発達を保障するという、日本の保育や幼児教育の到達を無視するものといえます。

また、すすめ方や内容についての議論がされないまま、スケジュールだけが示されています。成り立ちや機能が異なる幼稚園と保育所の一体化に、短時間で結論を出すことは無謀であり、幼・保の関係者がともに懸念を表明しています。拙速にすすめるべきではありません。

5・地域主権改革と称し国の最低基準は廃止し、自治体が条例で定めることに
第4は「地域主権改革」と称しナショナルミニマムである、保育所最低基準の廃止、地方条例化が提案されてい ます。 ▲職員の配置や施設面積の基準は国がつくる「従うべき基準」とし ▲園庭、避難用階段などは自治体ごとに決める「参酌基準」=参考基準とする。 さらに ▲東京など待機児童が多い地域については待機児解消までの措置として施設面積基準も自治体で独自にゆるめてもいいーというのです。今でさえ国際的にも低い基準を一層下げてもいいというのですから子どもの成長と安全を脅かすものになりかねません。戦後直後に、これ以上下回ってはならないと決められた、まさに「最低基準」ですから、良くする改善こそ必要です。

6・国庫補助負担金を一括交付金化し使途を自治体任せに
保育所運営費などの福祉、教育に関わる国補助負担金を、一括交付金化し、使い方を自治体任せにするとしています。保育の地域格差をうみ、保育所運営の困難化と職員の処遇の低下が危惧されます。

◎自らは声をあげることができない幼い子どもたちのために、大人たちが何をなすべきかが今、問われています。

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格差と貧困が広がる中で、保育所入所要求が高まり、待機児童が急増しています。

保育所は子育て世帯のくらしのセーフィティーネットでもあり、保育を必要とするだれもが安心して預け働くことが出来る保育制度が必要です。

国民の生活と子育てが困難に直面している時だからこそ、こどもの発達、保護者の就労と生活を同時に保障し、安心して預けられる公的保育制度を守り、認可保育所を緊急増設することが必要です。 ぜひ声をあげていきましょう。ご意見をおよせください