6月議会に,川崎市は心身障害者手当の支給を大幅に縮小する議案を提出,私の所属する健康福祉委員会で6月23日審議しました。
当日,手当の存続を求める6団体が名を連ねた陳情と一括審査となりました。私は手当を大幅に削減するこの議案に反対しましたが,他の会派は賛成し,大勢の障害を持つ方々が審査を見守る中、賛成多数で可決されてしまいました。
改訂議案の内容は、手当の支給対象者に精神障害者を加えたものの、「重度重複障害者」に限定したため、これまでの21,631人から1600人へ、なんと約2万人もの方が,手当が廃止になるというものです。そこで浮く財源6億3千万円を障がい者の在宅福祉の充実にまわすという説明が,行政からありました。
私は,「在宅福祉の充実は必要です。どの項目も私たちは充実を求めてきた。でもだからといって、サービスを利用する時の原資になる手当が廃止されたら逆にサービスを使えなくなる人がたくさんでる」と、実態をしめして主張しました。
障害者自立支援法で応能負担から応益負担にかわり、1割の定率負担になった。多くの皆さんの必死の運動とともに共産党は議会質問を繰り返し行い、昨年4月から低所得者の負担はゼロになった。しかし、自立支援法の対象外のサービスは自己負担があるのです。
ある身体障害4級、精神障害2級、療育手帳をもつ重複障害の青年は,更正相談所から、今から体を動かすリハビリをしないと将来体が動かなくなると指導され、トレーナーについてもらいストレッチに通っているが保険が利かないので1回30分・3150円で月4回通っているが,手当を原資にしている。手当がなくなれば通えなくなる。と言われていました。
また中途失明者のかたは、障害年金が月600円減り、国保保険料が200円あがった。その上手当がなくなれば生活が厳しくなる。と言う声が寄せられました。課長が障害者の主な所得保障制度として説明した「障害基礎年金」は昨年より年額4,000円減額されるなど、どの年金も軒並み減額されているのです。
また重度の知的障害のお子さんを持つお母さんは、自分が病弱で,高齢になってきたので、ヘルパーさんにお風呂に連れて行ってもらっている。ヘルパーさんの交通費も利用者負担なので、手当がなくなるのは厳しいといわれていました。
陳情文にも、体温調節がうまくできない重度障害者には空調設備が不可欠ですが、光熱費の高騰が生活を圧迫している。車いす修理の際に交換する部品が物価の高騰で基準額では納まらなくなり、その差額を自己負担した。と書かれています。まさに生命と健康、生活を土台から支えるために,手当は必要なんだと主張しました。
私は、まずそのことを事例で主張し,次に在宅福祉の充実のメニユーがいろいろ出ているけれど、そのうち6つの事業について,具体的に質問しましたが、以下のように、今後検討するという答弁でした。
・ 日常生活用具の「対象用具の拡大」とあるが、拡大され る用具はこれから検討する.
・ 障害児放課後支援の「タイムケア事業の増設」とあるが新 たな開設費用、家賃補助等を考え ているが、カ所数は これから検討する。
・「移動支援事業の一元化」とあります。現在市は,社会生活上不可欠な移動支援は3%の自己負担 とし、余暇活動の移動支援は8%の自己負担として2分類していますが、この2分類に決めるときに,私はなぜ目的によって分類するんだ。本来どれも必要な移動支援であり、移動の権利を保障するのに二つに分類するのはおかしいと反対の議論をさんざん主張しました。今回、障害者 の皆さんの一元化を求める声に答えていきたいということですが、費用負担については,今後検討する。
・ 「重度及び高齢障害者に配慮したグループホーム等の 整備」とあり、整備費の助成内容は今後検討、支援加算を拡充する内容は、日中支援をした場合の加算等を考えているが具体化はこれから 。
・ 「相談支援システムの充実」とあります。包括型相談支援センターは職員3名+非常勤1名。地域型2名の体制を考えているが、今ある相談 支援センターをどのように再編するかはこれから検討するというものです。これには,当事者抜きに決めないでほしいという声がたくさん寄せられ,決める前に当事者へ説明会を開催し意見聴取をおこなうべきと主張しました。行政から、「障害福祉計画」の改訂に伴い,関係団体のヒアリングを今年の夏頃に行う予定でその中で行っていきたいという答弁でした。
浮く財源を在宅福祉の充実に使うと言っていますが、以上のように具体的な内容はこれから検討するというものでした。
私がもう一点こだわったのは、今回、在宅福祉の充実の中身は、新規事業をいくつか立ち上げるのと、従来の事業をいくつか拡充するというものですが、浮く財源すべてを新規事業の財源と拡充部分に使うべきだということです。その質問に対し、「そうしていきます」という答えでした。
なぜこだわったかというと、神奈川県が,在宅重度障害者手当を大幅に削減する代わりに、「地域生活支援プログラム大綱」を策定し新たな施策を展開しようとしたものの、今年度予算ででは,昨年度予算化された新規事業を軒並み削減したという報道があったばかりでしたから、そんなことがあってはなりませんので質問し、確認しました。
各会派一通り質疑した上で採決に入る前に,私は,明確に、在宅福祉の充実は重要だが,サービスを使うための原資にもなっている手当をなくせば,逆にサービスを使えない人もでてくる。在宅福祉の充実は、こうした基盤整備の充実と手当の存続が並行して保障されるべき。障害者の方々がサービスを安心して使えてこそ充実したと言えると発言し,2万人もの方が受給できなくなるこの議案には賛成できないと発言しました。
公明党から,採決を待ってほしい旨の発言と民主党から在宅福祉の充実が確実に行われるために付帯決議を出したいという意見がだされました。
そこでいったん休憩にはいり、約20分後に再会し、民主党から,再度局長に確認したいという質問と答弁が合った後、採決に入りました。
反対は共産党だけで,ほか賛成し賛成多数で可決しました。
質疑に先立ち、何人もの障がい者や家族の方々から、実態と意見を聞かせていただきました。どの方も手当がなくなったら厳しいと言われ,その実情を話してくださいました。それだけに、可決にとても悔しい思いをして不覚にも涙がじわっとでてしまいました。