このまちで子育て

政府の進める保育制度の大幅な見直しで子どもがどうなるか心配です 08年8月3日

2008年8月7日

政府の進める保育制度の大幅な見直しで子どもがどうなるか心配です いま、保育制度の大幅な見直しが検討されています。
経済財政諮問会議で「保育サービスに係る規制改革について年内に結論を出してほしい」という総理の発言があったと報じられています。児童福祉法は第1条で「すべての児童は等しくその生活を保障され、愛護されなければならない」と定め、保育に欠けるこどもについて、市町村の保育実施義務が明記されています。政府の進める見直しはこれまでの保育制度の根幹をかえてしまうものです。
しんぶん赤旗の8月2日付けにわかりやすい記事がありましたので、準用しながら私のコメントも掲載させていただきます。
当面の焦点は「入所方式の変更」と「設置基準の見直し」です。

直接契約 サービスはカネ次第?

入所方式は、市町村が入園先や保育料の決定に責任を持つ現在の方式から、利用者と園との「直接契約〈直接入所〉」方式への変更が検討されています。直接契約では行政の責任は大きく後退します。現在は所得に応じて決められる保育料も,園側の経営状況などの事情で決められることになります。「○○時間利用でいくら」「給食はいくら」とサービスが細切れになることも考えられます。“保育のなかみもカネ次第”となる恐れがあります。格差が子育ての格差になってはならないと思います。

施設などの最低基準撤廃 低水準歯止めなし

保育所の施設面積や職員配置などの全国一律の最低基準の撤廃は、政府の地方分権改革推進委員会などが求めています。国は標準を示すにとどめ、地方が独自に設定できるようにすべきだとしています。
現在の最低基準は1948年につくられたもので、戦後まもなく、まさに最低の基準として定められ、戦後の復興がなされたとき基準を向上させる義務も謳われました。ですから今日から見ればきわめて低い水準です。その基準までなくしてしまえば、歯止めがなくなります。財政状況により、地域間格差も生まれかねません。これまで、自治体や保育関係団体から国に最低基準の改善を求める要望は繰り返されてきたにもかかわらず、殆ど改善されませんでした。いまやるべきは、最低基準をなくすのでなく、最低基準の抜本改善だと私は考えます。

企業参入 新たな儲け口に

制度改革の狙いは、保育を「市場化」し、営利企業のもうけの場にすることです。厚生労働省が企業に認可保育所の運営を認めたのが2000年3月でした。03年6月には公の施設の管理運営を株式会社でも行なえる指定管理者制度が導入されました。財界は保育分野の潜在的市場規模を2兆円と試算するなど新たな儲け口の出現に沸いたといいます。
東京都の事例 食材費一人一日数十円
国より低い基準で東京都が開設した認証保育所では、もうけを優先し、保育の質を切り下げる例がでています。企業率のある園は、食材費を一日ひとり数十円に抑えていました。給食には百g10円の鶏肉や見切り品の野菜を使い、おやつは卵ボーロ数粒などという実態でした。
日本経団連は「東京都の認証保育所を参考にした仕組みを導入すべきだ」と求めています。しかし、保育の場に営利企業がはびこれば、犠牲になるのはこどもたちです。

反対の声 立場声広がる

一方、制度改変に反対の声が立場の違いを超えて広がっています。
全国保育団体連絡会が6月に国会に提出した「直接入所方式の導入反対」「最低基準の抜本改善」を求める請願書は衆参両院で全会一致で採択されました。
全国保育協議会(全国の認可保育所の93%が加入)は6月、「市場原理による『直接契約』導入反対」などの緊急提言を発表。
全国私立保育園連名(約6800の私立認可園が加盟)も「最低基準を廃止し自治体ごとの条例による独自基準に切り替えることに反対」とのアピールを発表しました。

福祉にお金で差をつけるのか

帝京大の村山教授は「保育園は小学校とほぼ同数ある。保育の必要なこどもを預かるだけでなく、地域の親子に無料で園庭を開放したり、子育て相談に応じたりする、地域の大切な資源です。営利目的で参入する企業は地域に根つかず、儲からなければ撤退してしまいます。全ての人に等しい水準を保障しようとする福祉の論理に、お金でサービスに差をつける市場原理はなじみません。最低基準も、いまの水準では不十分で、拡充が必要だというのが保育界では常識です。それをなくそうという発想自体、こどもの権利を侵害するものです。いまの保育所・保育制度を拡充して、子育てしやすい地域・社会をつくっていくのか、「子育てもカネ次第」のしゃかいにするのかーどちらが日本社会のためになるのかを考えるときです。」というコメントが紹介されていました。

どの子も等しく必要な保育が受けられるように、公的責任を投げ出す制度の改変ストップの声を急いであげなくてはならないと思います。