子育て新システム閣議決定される
政府は3月30日の閣議で現行の公的保育制度を解体し、保育を市場化・産業化する「こども・子育て新システム」の関連3法案を閣議決定しました。
「保育所にはいれなかったので仕事を辞めた」「一刻も早く預けて働きたいのにはいれなかった」「育児休業明けが迫っているのに入れなかった」など保育所に申し込んでも入れない切実な実態が続いています。川崎市では今年も4月入所希望で、2月時の不承諾数が2,699人と過去最多になりました。
新年度がスタートしましたが,現状どうなっているのかとても心配です。今,雇用悪化で非正規化や減収が進む中,保育所は子育て世帯の生活を支えるセーフティーネットの役割を担っています。そのようななかでこの新システムで保育や子育てがどうなるのか、関連法案が近く国会に提出されようとしていますが多くの不安が広がっています。
破綻した幼保一体化
新システムの目玉改革のひとつであった幼保一体化は議論が迷走しました。議論が迷走したのは、民主党が確たる目的や理念もないのに一体化を提案し,その実施に固執したからではないでしょうか。
新システムになると,大多数の保育所はこども園のなかでも幼稚園と保育所の両方の機能を果たす「総合こども園」になります。
待機児解消が新システムの目的にされましたが、総合こども園では,待機児童の8割ちかく占める0〜2歳の低年齢児保育を義務づけないことになったので,待機児を解消出きる保障はありません。
16日の参議院予算委員会で日本共産党の田村智子議員が「待機児童の人数をつかんで保育が行われるまで市町村が義務を負うのか」と質したのに対し,小宮山厚生労働相は待機児童解消に市町村が責任を持てなくなることを否定できませんでした。
また、最終的には幼稚園は,新システムに入らず幼稚園のまま存続することが認められるなど、とても一体化とは言えない複雑な制度になっています。
保育所入所の市町村責任が大きく後退
現行制度は、児童福祉法24条のもと国と自治体が保育実施義務を負っています。ところが新システムでは24条を改悪し,保育の供給を企業や市場任せにしようとしています。新システムでは「市町村は保護者の就労時間に応じた保育の必要度を認定し、施設入所の利用調整、あっせんを行う」としていますが、入所は保護者とこども園の直接契約で入所決定は施設が行います。入所できなくても保護者の自己責任になります。
障害児や福祉要件での入所の保障について,優先利用の対象として市が利用可能な施設をあっせんする。施設には正当な理由がない限り応諾義務が課せられているとしていますが、定員に空きがない他、スタッフの不足なども正当な理由になるとされており市町村の責任で入所が保障される訳ではありません。
補助金が株式の配当に?
しかも、保育のために支出される公費の使途制限を撤廃し株式配当も容認するため、保育士の人件費削減と待遇悪化が強く懸念されます。
すべての子どもに安心安全の保育を
格差と貧困が広がり,OECD調査によると日本の総体的貧困率は加盟30カ国中4番目に高く、こどもの貧困率も悪化しています。
国民生活や子育てが困難に直面している今,必要なのは,子どもの発達,保護者の就労と生活を同時に保障することができる保育制度です。
国と自治体が責任を負う現行保育制度を基本とした、子ども本位の制度改革です。 待機児童解消のためには認可保育所の増設を進めること。規制緩和でなく,子どもの生命と安全を守る保育環境に向けて最低基準を抜本的に改善することです。そして保育所が足りない現状のなかで、待機児童の受け皿となっている認可外保育所への支援を拡充し,どの子にもゆきとどいた保育を実現することと考えます。
私は昨年の6月議会で質問し、ホームページにも掲載しましたが,子どもの保育環境の悪化が懸念される新システムは反対です。今年3月3日に共産党市議団として全国保育団体連絡会事務局長の実方伸子さんを講師に講演会を行い勉強しましたが、実方さんが最後に言われた「子どもを守るたたかいはやめてはいけない。私たちは勝ってはいないけど負けてはいない」ということばにほんとに「そうだ!」と思いました。