議会活動報告

「神奈川県知的障害者施設保護者会連合会」からの請願審査

2012年5月24日

5月23日の健康福祉委員会で、知的障害をおもちで施設入所されている保護者会連合会のみなさんが,議会請願された「知的障害者が安心して暮らせる入所施設の新設等を求める政府意見書の提出についての請願」の審査がありました。

安心して暮らせる入所施設を新設し,グループホーム・ケアホームを充実すること。障害程度区分は廃止し,支援の必要に応じた仕組みにすること,安定して継続的な支援が受けられる職員体制にすること、国と地方公共団体は障害福祉サービスを提供する義務を負うことについて国へ意見書を上げてほしいというものです。

障害程度区分の廃止については,障害程度区分によって、受けられるサービスの量と質、すなわち給付の額が決められてしまい、区分によって利用の制限があるのです。自立支援法の施行以来その矛盾が噴出している問題です。本来は一人一人の障害特性にあった必要な支援が受けられる仕組みにすべきですが、私は,審査のなかで、まずはその問題点を浮き彫りにしたいと思って議論しました。

障害程度の区分判定は、介護保険の要介護度の判定プログラムと同じ物を使っています。判定調査員が調査する聞き取りの項目が106項目で,高齢者の介護にどれだけの時間を要するかという観点でつくられている、まさに介護保険と同じ項目が79項目,加えて障害者用として27項目あるものの全体的に知的障害者等に当てはまらないことが多く1次判定(,調査員の聞き取りしたデータをコンピュータにかけてだされる)では、正しく反映されず低く判定されることが大変多いことです。

知的障害、身体障害、精神障害のそれぞれの障害の内容が違うとともに重複障害の方もたくさんおられるのです。同一基準で区分しようとすることに大きな無理があります。こうした実態について,担当課長は、そうした実態があるが、審査会による2次判定で修正される様工夫がされている。昨年の骨格提言の資料では、知的、精神の場合、4割から5割が2次判定で修正されていると書かれていると答えました。

現在衆議院で可決され,参議院に送られている障害者支援法案では,障害程度区分を含めた支給決定のありかたについて、施行後3年を目処に検討するとしていますが、当事者も参加して新法を検討され、そこでまとまった「骨格提言」では、「障害程度区分を使わずに個別事情に即した必要充分な支給量が保障されること」を打ち出しました。是非その方向にいくよう意見書を上げる必要があると主張しました。

入所施設の件では,川崎市が,1月30日から2月20日にかけて行った実態調査のまとめによると,主な介助者の年齢は父母ともに60歳代から80歳代が8割を占め、高齢化が進んでいるということ、また健康状態は足腰が弱っている,持病がある方が大変多く、さらに介護度をもっている,障害をもっている方がおられること等がうきぼりになり、入所施設を70%の方が希望され、すぐに入りたいという方も大半を占めているということが明らかになりました。
その一番の理由は,親の高齢化が進み,今後面倒を見てくれる人や住まいが確保できるのだろうかという不安が強いのです。
川崎市は,この実態調査の結果をしっかりうけとめ、入所施設の整備について具体的に打ち出すことを求めました。

川崎市の施設(市内、市外)に入所されている方531人、グループホーム、ケアホームは536人分の定員がほぼ満員ということ,また施設入所の待機者数は407人という説明がありました。

市は、平成25年4月に「井田重度障害者等生活施設」の開設に伴い、現在、井田にある障害者支援施設めいぼうの入所部門の移行と、新たに定員を20床増やし70名定員の施設整備計画を進めています。
また、議会への請願が繰り返し提出され,全会一致で採択してきた、川崎の「南部地域における入所施設の検討」も計画に盛り込まれていますが、まだ検討の段階ですから,具体的な整備計画になることを,今回の審査でも強調しました。
またグループホーム、ケアホームの増設は,地域への移行の要となりますが、市は,年間80名分の増設を毎年行う計画ですがしっかりとりくむことと,同時にこれは施設もそうですが職員体制の確保と体制をとることです。

自立支援法で報酬が,日払い制になったため,事業者側は運営が大変厳しい、職員の確保が困難と悲鳴があがっています。人件費や一般管理費等,事業経営上,恒常的に必要とする報酬については,月額制とし,障害者の方が安定した支援が受けられるようにすべきです。
先に述べた「骨格提言」でも,人件費等は原則月払いとしています。私は,今回の政府案で、たしか施行後、3年を目処に検討するとしていたが、このことも意見書を上げていくべきと考えると主張しました。

私たち議員団はこの間、こうした厳しい実態をとりあげ、市としての運営支援のための加算を求め質問してきました。市は事業所の運営支援のために、市単独加算をもうけてきましたが、今年度に新たに夜間体制加算など3つの加算新設と来年度行動障害加算等3つの加算を予定しているとの説明がありました。

障害者の方が,自分の生き方、くらし方,どこで住まうか等について,自分で選び,決めていく,そのことを支援していくことが大切と思います。そのためには、入所施設の増設、グループホーム、ケアホームの拡充と同時に職員確保の支援対策が必要ですし、施設から地域へを進めるためには、地域で暮らすための環境やさまざまな支援が行き届くようにしなければならないと思います。

委員会では、国への意見書をあげていきたいと我が会派は主張しましたが、他会派が意見書をあげないで国の議論と動向を見守るということで、一致を見ず,継続となりました

民主党政権は障害者自立支援法の廃止と障害者福祉の新法制定を公約にかかげて政権交代しました。全国14か所で71人が障害者自立支援法は憲法違反だとして訴訟を開始していましたが、民主党政権の約束を信じ、裁判所で和解に応じました。和解にあたって原告と国が結んだ基本合意書では、自立支援法の廃止と新法の制定が確認されています。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という要求を受け,当事者参加で新法を検討する場が内閣府にも受けられ、2010年4月から議論が重ねられ、骨格提言をまとめました。障害に基づく社会的不利益を解消する国や自治体の義務や基盤整備を新法に盛り込むこと等を求めています。

今,政府は政府案を提案し、国会で議論しています。しかしその案は,「骨格提言」の改革のなかみがほとんど盛り込まれていないもの。新法に値しない政府案をだしてきました。障害者の願いを裏切ったといえるのではないでしょうか。「骨格提言が生かされた新法をつくらないと,一人一人の願いはかなえられない」と,今,皆さんはより多くの方と運動をすすめていきたいとがんばっておられます。私たちも,皆さんの思いや意見をしっかり受けとめてがんばっていきたいと思います。