このまちで子育て

公立保育園の民営化について-12月議会代表質問からその2

2009年1月5日

*なりたたなくなった民営化の理由
これまで、市は民営化を行なうのは公立保育園の民営化について-12月議会代表質問からその2

①「待機児解消―保育受け入れ枠の拡大」
②「長時間延長保育の実施」
③「経費を削減して他の保育事業にあてる」ため
といってきました。
しかしどの理由も論拠が崩れ、あるいは不明確で、保護者の疑問に答えられていません。

①は定員を増やすのは公立のままでも可能であり、今年明らかにされた計画では5園でわずか15名の定員増を見込むだけです。

②についても公立で長時間延長を実施できない理由を示すことができず、市は「公・民の役割分担」を強調するばかりでした。市民から長時間延長など多様な要求があれば率先して市が応えようとするのが本来の自治体の役割です。

③についても、新たな保育事業の経費を、現在保育園にかようこどもたちを犠牲にすることで捻出すべきでなく、市の財政全体の中で支えるべきです。

さらにいえば、公・私の運営費の差は職員の経験年数・年齢における給与の差がその主なもので、市が言っている5千万円あると言う差額の根拠も、あるモデル園の比較を一般化したもので正確なものではありません。5年、10年のスタンスで見れば、この差は固定的でなく民間の人件費が公立の人件費をこえることもありえるわけで、5千万円の根拠も曖昧なものにすぎません。

*保育緊急5カ年計画で新たに必要になる保育士は630人!
保育士の確保に市は責任をはたせますか

今議会の中で、保育緊急5カ年計画【2007年度~2011年度】で、必要とされる保育士の確保は630人に上り、そのうち、民営化に伴い必要になる保育士は380人であることがあきらかにされました。
さらに07年度中の保育士の離職率は公立が2・7%なのにたいし、指定管理者制度により民営化した3箇所の保育園では、18・5%と7倍もの高い数値を示しています。保育士の離職率が高いことは、人材確保をさらに困難なものにします。こうした人材確保について市は「民間事業者が責任を持って対応すべきものであり・・職員確保の具体的な計画を把握し・・運営開始後は職員配置の状況を報告させるなどしている・・」と言う答弁で、市は計画の把握と報告をさせるだけで責任をもたないことが明らかになりました。
公立の保育園を存続させれば、退職者分の補充をすればよく、人材難に苦しむ必要もありません。指定管理者制度による価格競争と企業参入による利益追求が、保育士の労働条件を引き下げ、一層人材確保を困難にしています。目先の経費削減で公立保育園を廃止していくことは、人材確保の面でも将来大きな禍根を残すものです。現在社会問題になっている介護、障碍分野の人材不足を保育分野にもたらすものではないでしょうか。人材がバランスよく配置され、地域の子育て支援の役割も担う公立保育所を、無理に民営化する根拠はありません。

*保育の専門性と継続性が担保されますか
先ほど述べた離職率がたかいということは保育士の入れ替わりが激しいということであり、保育に最も大切な、こどもと保育士の信頼関係、人間関係をつくりづらくします。保育者同士が日常的に保育を語り、たかめあう集団のなかで新人の保育士も育ち保育が継続されていきます。そのためにはベテラン、中堅、若い人のバランスよい配置が必要ですがベテラン層の配置が困難にならざるをえません。(ある民営化園では、初年度に経験6年以上が18人中1人、2年以下が12人。別の園では初年度に経験6年以上が23人中1人

こどもの発達保障と保護者の就労の保障、保育所職員の労働条件の保障を3本柱で培ってきた公立保育所の歴史は、民間保育所の保育環境を引き上げる上でも重要な役割を担ってきました。人件費における公私間格差を是正してきたからです。この間、行革により、人員が削減されてきた公立保育園を、さらに民営化することは、さらにより安上がりな保育環境へと向かわせるものであり、そのことは、民間の保育運営にも、困難をもたらすことに連動していきます。

* 児童福祉法は
保育園を選ぶ権利とそこで保育を受ける権利を保障しています
公立保育園の民営化は幼い子どもたちにとって、突然の先生との別れを意味し、大切な保育の継続性を断ち切るもので、少人数による6ヶ月間の引継ぎ期間で済ませられるものではありません。各地の裁判の判例でもしめされたように、『保護者の保育所を選択する権利』は児童福祉法24条にも定められたもので、尊重されなければならず、経費削減を理由にこの権利を奪ってはならないと考えます。

*わたしたちは、社会福祉法人による認可保育所の整備を否定するものではありません。川崎市の保育行政は公営と民営が車の両輪として保育事業を支えてきたことはこれまでも一貫して言い続けてきました。待機児の解消と新たな保育需要に応えるために、社会福祉法人の力を借りて新たな認可保育所の整備を進めることは今後とも必要です。しかしそれは公設の保育園を民営化することとは異なります。