NHKテレビで放映された「サイレントプア」のモデルになった豊中市社会福祉協議会のコミュニティーソーシャルワーカー・勝部麗子さんから直接お話を聞くことができました。制度の狭間で苦しむ人を支援する、どんな困難を抱えている人にも,寄り添い、あきらめない。福祉の真髄をみる思いでお話をお聞きしました。
コミュティーソーシャルワーカー(CSW)とは、従来の制度や法の枠組みのなかでは十分に対応できない、いわゆる“制度の狭間”にいる人に寄り添いながら、個人の問題を地域共通の課題としてとらえ、住民ボランティアとともに新たな支援の仕組みをつくり出していく地域福祉の専門職です。
地域福祉計画に位置づけされたコミュニティーソーシャルワーカー
阪神淡路大震災がおき、一人一人が見える近所の関係が大切である事を実感し、平成16年に大阪府の「地域福祉計画」のなかで、CSWが位置づけられ、社会福祉協議会に配置されました。自治体の計画に位置づけられたこと、そして担う豊中市社協・勝部さんの、ひとりも見捨てないという、制度の狭間で苦しむ人を救い出す,しかも1人でではなく、住民を巻き込んで、優しい地域社会をつくるという強い意志とあふれる想い、専門家としての誇りと人間性がこうした実践をつくり出しているのだと思いました。これは、大阪子ども貧困アクショングループを立ち上げた徳丸ゆき子さんと共通すると思いました。
「困った人は困っている人,その困っている事を支援するのが大切です」
サイレントプアの第1話で放映された「ゴミ屋敷」の問題には、苦情を言って排除しようとしていた住民とSOSをだせずにいた家主のあいだにはいって解決しました。何度訪ねても家主の方と合えなかったけれども、なんと2年間もの間何度もゴミ屋敷きの訪問を繰り返し、名刺の裏に一言書き添えポストに投函を続けました。勝部さんは言います『困った人は実は困っている人でもある。それが何であるかをつかみ,寄り添いながら支援するのが大切です』と。
7日の22時から、NHK番組の「プロフェッショナル」で勝部さんのドキュメンタリーが放映され、ホテルで見ました。きれいに片付いて行く様子,地域住民の関わりと変化が紹介されました。ある日、勝部さんは、買い物から帰ってきた家主と合う事が出来、実は片付けたいと思っている事を聞き出し、お手伝いさせてくださいと伝えると同時に、近隣住民に集まってもらいその事を伝え、自然にお手伝いするという流れをつくり出し片付けが進んで行った。苦情を言っていた住民が最後理解し、優しくなった。地域住民が変わったということです。
豊中市社協のとりくみ
豊中市社協のCSWは,豊中市地域福祉計画に基づき、豊中市と恊働で小学校区単位に身近な相談窓口を開設しています。SOSをキャッチする受け皿①として、「福祉何でも相談窓口」をおおむね週1回、2時間程度開設しています。②として,校区福祉委員会は市社協と連携し身近な地域での助け合いを行います。要援護者を対象に、声かけ見守りなどニーズの発見活動や話し相手、買い物、薬とり、通院の付き添いなど個別援助活動を行う「小地域福祉ネットワーク活動」を全校区で実施しています。これらの活動をより広げ、支えるためにグループ援助活動としてふれあいサロンやミニデイサービスなど気軽に集まれる福祉活動も行っています。その他、徘徊SOSメールプロジェクト、福祉ゴミ処理プロジェクト、安心協力員の派遣等多様な取組を展開しております。これらをバックアップするのがCSWです。
活動単位のひとつである「桜塚校区福祉会」を視察させていただきました。
会長さん、副会長さん,書記の方が待っていてくださり、活動を紹介してくださいました。第1、3、5週の水曜日、手作りお弁当(1食400円)を自宅まで届ける活動や,夕食会、1人くらし高齢者の会・まほろば会が毎月第2火曜日11時から2時まで、昼食会や遠足、歌、おしゃべりなどを行っています。虚弱な高齢者や障害のある方対象のミニデーサービス,子育てサロン等、本当にたくさんの活動に驚くばかりです。皆さん、ボランティアで行っています。
各校区、30人から200人のボランティアの組織が大変苦労したけれどもある程度できてきて、地域でのみまもりができるようになってきたこと。また行政が縦割りのなか、地域の問題は縦割りでは解決できない。そうした市民の相談に応え、解決できる場所が出来てきた事。それが豊中市ライフセーフティネットで、福祉に関わる人がオールキャアストで集まる、縦割りでない地域福祉ネットワークを構築しています。その主催がCSWです。
この仕組みづくりにも圧倒されました。勝部さんは『住民の力を引き出しながら、行政の力をかりる』と言われました。制度の狭間で苦しむ方々をどう救うのかが川崎でも問われます。やはり根本になる行政の姿勢、施策がまさに問われる問題であると実感しました。