13日の健康福祉委員会で、上記の2つの審査が行なわれました。
まず、成人ぜんそく医療費助成制度の存続に関する請願について
この制度は国と絡む歴史的な経過があります。国は1973年に公害健康被害補償法を制定し、大気汚染を公害と認定し公害患者救済を行ないましたが、1988年、公害は終わったとして川崎区・幸区を含む全国41の公害指定地域を解除し、新たに発生している被害者の救済を打ち切りました。工場排煙中心の大気汚染から自動車排出ガス中心の大気汚染に変化してきたことから、このときの国会の付帯決議には「幹線道路沿道等の局地汚染にはその健康影響に関する調査研究を早急に推進すること」がつきました。
当時の川崎市議会から「まだ大気汚染公害は終わっていない」として「打ち切りは時期尚早」の意見書を国に提出。川崎市は、本市独自の制度として、1991年に、川崎区と幸区対象に成人ぜんそく患者の医療費無料制度をつくり患者の救済を行なってきました。大気汚染によって呼吸が出来なくなり苦しみながら多くの患者さんが亡くなり、今も続いているのです。
全国的に5つの都市の公害患者の会が道路公害訴訟を起こし闘ってきました。司法は1993年の大阪西淀川判決を皮切りに、川崎には1998年に、続いて、尼崎、名古屋、そして最後2007年東京と「大気汚染と公害病の因果関係は確定的」と断罪しました。
一方国は、自動車排出ガスと喘息発病の因果関係を5年間にわたり調査する「そらプロジェクト」を2005年からスタートさせ、2011年に結果と今後の課題と対応方針をだしました。
川崎市は2007年に、全市、特に北部地域に患者が広がっている実態から、制度の目的をアレルギー対策とし、全市の患者を対象に拡大し、患者負担は1割とする「川崎市ぜんそく患者医療費助成条例」をつくり、独自努力をしてきました。存続を求める請願は今年3月にも審査されましたが、改選後の8月にも請願が出され、審査することになりました。この間、制度のあり方を見直しするという市長の答弁などもあり、患者会からは存続を訴えています。
今年3月の健康福祉委員会の審査でも行政は「そらプロジェクトの結果,大気汚染と成人ぜんそくの因果関係がはっきり認められていないので、その結果を尊重し、様々なアレルギー要因等も原因と考えられるので、整合性をもたしていきたい」という主旨の答弁をしています。
今回も同じような見解が述べられましたが、私は、
① 環境局が調査している本市の大気汚染の状況について
② 環境局が調査している主要沿線道路の車の交通量と大型車混入率、自動車排出ガス測定局の測定結果について
③ そらプロジェクトの結果と今後の対応でなにを言っているのか
④ 今後のあり方を検討するにあたってについて質疑しました。
① について、環境局は地域の大気環境を測定する測定局9カ所と自動車走行に起因する大気環境を測定する測定局(自排局)9カ所で環境測定を行なっています。自動車排出ガスに含まれる二酸化窒素(NO2 )と浮遊粒子状物質(SPM)、毒性が強く肺の奥深くまで達するといわれているPM2.5について、国の環境基準がありますが、NO2とSPMについて川崎市は独自に川崎市環境基本条例に基づく環境目標値を設定しています。この環境目標値を達成しているのかと質問した所、環境局環境対策課課長は自排局では達成していない。PM2.5についても、14局で実施しているが12局は達成していないという回答しました。まだまだ大気汚染は目標値を達成していないのです。
② について、前述の課長は、市内の主要幹線道路の交通量は、池上測定局のある東京大師横浜線は12時間で55,000台、大型車混入率も40%台、北部に患者が顕著に増えていますが、柿生自排局のある県道世田谷町田線は14,500台も走行しているとのことです。要は自排局の測定結果と患者発生率の関連性の調査が必要です。
③ について、そらプロジェクトの中心は学童の追跡調査でした。その調査結果では「自動車排出ガスへの暴露とぜん息発症との間に関連性が認められた」との記述、成人調査では「症例対象研究の副次的解析の一部において、EC(元素状炭素、自動車排出ガスがおおきな要因とされる)個人暴露濃度帯のオッズ比が統計学的に有意であったことに留意する必要がある」と報告しています。環境省は今後とも幹線道路沿道における自動車排出ガスへの暴露による健康影響を引続き注視していくことが必要と考えられるため、長期的かつ予見的観点から継続的に実施してきている環境保健サアーベランス調査を通じて環境モニタリング、健康モニタリングを行なうこと等を述べているなど、決して関連性がないとの結果を導きだしていません。
④ 第1期環境パートナー大気汚染部会は川崎市に対して「北部地域に小児ぜんそく医療費助成受給者が多く、原因究明のため、大気汚染実態、社会環境、地形、気象条件等総合的な調査研究の実施、及びその結果に基づく対策をとることを提言している。川崎市は今議会に提出している「新総合計画素案」のなかで「成人ぜんそく患者医療費助成制度の在りかたの検討をする」とうちだしているが、検討に当たっては大気汚染実態を調査する環境局としっかり連携した検討をするべきと主張し、環境局はしっかり調査をすること、健康福祉局は連携して検討すると答弁しました。
各会派は継続と主張しました。わが会派は制度の存続を願う請願なので、本来は主旨採択したいが、みなさん継続ということですので、意見要望をしっかりお願いして継続で結構ですと態度表明しました。