このまちレポート

奈緒ちゃんの「やさしくなあに」がかたりかけるもの

2018年2月5日

4日(日)、川崎市立中央支援学校で、伊勢真一監督のドキュメンタリー映画「やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年」が上映され、Sさんに進められ観に行きまし0001た。映画のあと、奈緒ちゃんのお母さんと伊勢監督のトークがあり、感動とともに奈緒ちゃんに元気をもらいました。

この映画は、生まれたときから難治性のてんかんと知的障害をもつ奈緒ちゃんとご家族を、奈緒ちゃんが8歳のときから35年にわたって、奈緒ちゃんのおじさんである伊勢監督がカメラを回し続けた作品です。奈緒ちゃんは生後6ヶ月で1時間半とまらなかったてんかん発作、1歳でも1時間45分の発作を起こす等、発作が頻発したそうです。弟が生まれて授乳中でも発作が起きる等、目が全く離せなかった.弟には奈緒ちゃん中心で手がかけられなかった。でもその弟さんはとてもお姉さんを大切にする人に育っている。・・その経過はトークで知りました。

奈緒ちゃんが、何度も「『やさしくなあに』といわなくちゃ」ということばを語りますが、ピュアな気持ちがその声にあふれています。奈緒ちゃんはもちろんお母さんの事大好き、弟さんにも、やさしい言葉をかけて背中をポンポンとたたくしぐさ、すぐにうたた寝をするお父さんに「おとうさん、またねているよ・・・」とお母さんに伝えることばとそのトーンにとても心地よさをかんじます。台所やリビング、いつもの会話、いつものやりとり。家族の悩み、家族の映画です。

このご家族をしっかりつなぎ、紡いでいるのは奈緒ちゃんだと思いました。お母さんはどんな時でも、愛情をいっぱい注いで育ててきましたが、お母さんは、トークで「奈緒がいたから頑張ってこれた。苦しくてものりこえられた。感謝している」といわれました。

また、お母さんは、「奈緒が伝えてくれるものー自由で柔らかい感性.ピュアな気持ち、うまれながらにかわらないものをもち続けている。

今の世の中、マニュアルのなかで、規制のなかで生きているし、マニュアルがないと動けない社会になっているのではないだろうか。奈緒ちゃんや障がいのあるひとには、マニュアルなんてない、とても自由。みんなが持ち合わせている優しさをストレートにだしてくる。この優しさに触れると自分にもやさしさがあったのに・・つい忘れてた。そんな気持ちにしてくれる映画です。

スクリーンに時々映される風の音、雪が舞う景色、なんでもない景色からも、大事な意味がつたわってくるものがあります。咲き誇るサクラと、花吹雪から太陽のような奈緒ちゃんの天性のあかるさをみました。

ピアノの先生だったおかあさんが、「埴生の宿」を演奏しながら歌います。メロディーとお母さんの歌声が本当にすてきでした。

お母さんがすごいのは、奈緒ちゃんを仲間と一緒に育てた事、「ぴぐれっと」という法人を立ち上げ、地域作業所、やがてグループホームをつくります.奈緒ちゃんは家族のもとを離れてグループホームで暮らし始めます.5人の利用者から始まった作業所は今、105人へと広がっているとの事です.「ピグレット」の仲間たちの日々を描いたドキュメンタリー映画も観てみたいと思いました。

そして伊勢監督は奈緒ちゃんや障害のある人たちを長年カメラで追い続けるなかで、この人たちが僕らに何を与えてくれるのか.いろいろな事をもらった。この人たちが僕らにくれるものー社会の人、みんなが気づいていかなくてはいけない.奈緒ちゃんの「やさしくなあにって言わなくちゃ」ということばは「けんかをしてはいけない」「やさしさってなーに?」をみんなに問うているのではないか。相模原事件のあった神奈川で.是非この映画の自主上映の運動を広げていただければと結びました。心にしみる映画会でした。